真鶴を舞台にした視覚を失った男とその周囲を行き交う人々の人間ドラマ。凡ゆる描写がとにかく丁寧で、1カットごとの動きや表情に意図があり、引き込まれ続ける。脇の一人一人に想いがあり、確かに、この世界に生きている実感を持てる。3年以上かかったのも納得の傑作。
『はこぶね』も『ジンジャーミルク』も金を払って性処理をしてもらうシーンや自慰行為をするシーンを意図的に入れていて、"健常者"から観た典型的(一面的)な"障がい者"の描写を逃れようとしているのも良かった。その描写が単に記号としてあるのではなく、しっかりドラマの中での意味も持ち得ていた。