フクイヒロシ

はこぶねのフクイヒロシのレビュー・感想・評価

はこぶね(2022年製作の映画)
3.5
田辺・弁慶映画祭 は和歌山県田辺市で毎年開催される新人監督作の映画祭で、
その受賞作を上映するのが 田辺・弁慶映画祭セレクション 。
テアトル新宿 にて今年は8/4~ 8/24まで開催。


まずはグランプリの 『はこぶね 』が上映中。
続いて各賞受賞作も上映。


好きなんですよね、田辺・弁慶映画祭セレクション。
毎年楽しみ。
新人監督作ならではの原初的な情熱が強く感じられるし
ある種の歪さもすごく魅力的。


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事前に何にも情報を入れずに観ました。
白杖をついている男性が出てるっぽい、くらい。
目の見えない方の映画なのかな、と。


観ている間ずっと『はこぶね』というタイトルがどういう意味なのか、
どういう展開になっていくのか、そっちを考えすぎてしまいました。


もっと没頭すれば良かった。。


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主人公は目の見えない男なので、勝手に「人生ハードモードなんだろうな」と決めつけてしまってました。


そりゃハードモードな側面もたくさんあるのは事実でしょうけど、
この主人公は荒波のような出来事も、飄々と強かに時に狂気で、荒波を凪へと鎮めていける人でした。


単純に我慢するとか諦めるとか足るを知るなどの対処療法的なことじゃなくて
根本的に〝生きる〟ということの捉え方が変わってしまった印象。


僕なんかだったら「詰んだ」と思ってしまいそうなシチュエーションでも
ゆるやかに正解を弾き出して淡々と遂行していく。


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その時に、天啓を受けるかのような、宇宙こら何かを受信するかのようなシーンがたまにあるのが面白かった。


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何といっても主演の木村貴知の存在感と素晴らしい演技ですね!


あの飄々感、浮遊感が作ったものに見えたらあざとくてしんどかったはずですが、
あの雰囲気で映画のど真ん中で存在していたのが凄かった。。


視力を失うイメージシーンがあるのですが
CG使ったのか、もしくはほんとに視力無くしたのかと思うほどの目の表情でした。
あんなことできるんですね。。


半2階のベランダに座ってる姿良かったなぁ。


あともちろん運転シーン。
『団地妻・昼下りの情事』(1971)のラストとのドライブを想起しました。


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人物は割と多くてそれぞれ面白いんですが、
「2人で喋る」シーンが多くて
2人の会話なのに観客への説明臭が強いものが多くてちょっと気になりました。


痴呆症なのにめちゃくちゃ明快なセリフを明瞭な滑舌で話していたのもちょっと。。