シルクの艶やかさが美しくて、監督の狙い通り手触りまで伝わって来るよう。丁寧に手縫いでカフタンを作っていく様子は、オートクチュールの製作現場を見ているようで興味深かった。着心地はどんなだろう。
以前観たこの監督の『モロッコ、彼女たちの朝』同様、丁寧な手仕事にフォーカスする所や静謐な絵画のような画面、自然と耳に入って来る街の喧騒に好感が持てる。
伝統を守るカフタン職人の夫と接客や仕入れをする妻。そこに若い職人が入って来て、夫婦の関係が変わって行く。いや、きっとその前から妻は夫の本来の性的趣向に気付いていたのではないか。
イスラム教では同性愛が禁じられているから、ハマムのシーンがすごく背徳感を感じ、辛い気持ちになった。
愛の形は人それぞれで、相手の全てを受け入れるということは尊い。でも、そこに少しでもやせ我慢があるのであれば、自分の気持を優先させたい。なので、私はこの映画の登場人物のようにはなれないだろうなと今のところは思う。