さすらい農場

薔薇の名前のさすらい農場のレビュー・感想・評価

薔薇の名前(1986年製作の映画)
3.9
ー 追悼 ショーン・コネリー様 ー
初代ジェームズ・ボンドとして男の色気をぷんぷんに振りまいた007を完全に卒業した後の代表作。
中世時代のヨーロッパで[絶対に笑ってはいけない修道院]を舞台にした格調高いミステリー。
世俗と隔絶された[知の迷宮]で起こる連続怪死事件の謎を解く修道士の活躍は、まさに[隠者の紫(ハーミット・パープル)]で雰囲気満点なのです。

[笑いは人を歪め、猿以下に貶める]
[笑いこそ理性ある人間としての証]
などと、哲学的なとんち合戦が魅力的。
[天使のラッパ殺人事件(勝手に命名)]の秘密を巡り、信仰と異端、寛容と排除をテーマに展開する[知]のバトルロイヤルは難解ですが、雰囲気で乗り切れるのでご安心。

[笑い]と[嗤い]の境界は曖昧で、善意が悪業を招く場合もある。
知的なほど何故かチャーミングに見えてしまう、ショーン・コネリーの魅力だけで満足できる一作なのです。