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イヴの総てのyukacafeのレビュー・感想・評価

イヴの総て(1950年製作の映画)
4.0
以前途中まで観たものの、何となく続きを観そびれてしまっていた本作。「午前十時の映画祭」での上映が決まってから、スクリーンで観られるのを楽しみにしてきた。

同じ年にアカデミー作品賞にノミネートされた「サンセット大通り」がハリウッドを舞台にしているのに対し、本作はブロードウェイの内幕を描いていて、それ故に「イヴの総て」が受賞することになったと言われているが、野心と上昇志向にとらわれた女の凄まじさとそこから生まれる悲喜交々を描いた本作も、「サンセット大通り」に負けずとも劣らない傑作だった。

どちらの作品も冒頭で結末が明かされ、そこから過去を紐解いていくというある種のネタバレから始まっているにも関わらず、観続けるうちに物語の核心に近付けるような作りになっていて、見応え十分だった。羨望や嫉妬、年をとることへの恐怖心などは、当時に限ったことでも芸能界に限ったことでもなく、現代の私たちも共感できる普遍的な感情で、人間の本質はそう変わらないものなのだなと。

「サンセット大通り」のグロリア・スワンソンと、本作のベディ・デイヴィスは、実年齢では10歳ほどしか変わらないようだが、両者から受ける印象は大分異なっていて、映画と演劇という媒体の違いのためか、あるいは旧態然としていたブロードウェイに対し、サイレントからトーキーへの移行という大きな転換期を迎えたハリウッドの違いによるものかと初めは思った。結局のところ、最も異なるのは、時代の潮流を読んで、自分が置かれている現実を認識する力と、大事なものを取捨選択できる力ではないかと。どちらの作品も物語と現実の出来事がリンクしているようで、そのあたりの秘話を知るのも非常に興味深い。

個人的にマーゴの付き人、バーディを演じたセルマ・リッターが気になり調べてみたら、「裏窓」でも同じように物事の本質を見抜くキーパーソンを演じていた。こういうタイプの女性が、いつも誰より先に真実に気付くのだなと妙に納得。細部まで実に良く作り込まれた傑作だ。
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