かきたろう

マッチングのかきたろうのネタバレレビュー・内容・結末

マッチング(2024年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

この作品は現代人が直面するストレスフルな体験を二つ表している。一つ目はSNSで成功した知人の写真を見ること、もう一つは2000円も払った映画館で失敗した映画を見ること。

ただ、予告を見た上でこの映画を見に行って悪い映画だったと不満を述べることは、マッチングアプリでとむ君にいいねを押して男運がないと嘆くようなものである。つまりそれは「そりゃそうだ」の一言で済む話。(注:ブロック機能のないマッチングアプリは使わないこと)

選択肢がますます増える現代で、恋愛結婚は家族の選択という重要な側面を強化している。だからマッチする相手を探すことは大きな問題。
しかし選択の余地がない家族の関係も存在する。もし子どもが親との関係でマッチしていなかったら、その影響はあまりに大きく、その他多くの社会的なマッチングで軋みが生じる。

とむはそういう意味で悪い星のもとに生まれたという自意識があって、影山は精神的に問題を抱えている。
輪花は恋愛が苦手な29歳のフリー実家住み社会人かつ原節子的に結婚を意識しだしているという、ここからどうとでもドラマを生み出せそうなキャラクター。
これらの要素を擁したこの映画は、あまりに陳腐なサイコキラー描写や理解に苦しむ登場人物の言動、どんでん返しのためのどんでん返しによりすっかりに変な作品に仕上がってしまった。

土屋太鳳は一見健康で素直な人だけど裏ではちゃんと感情出しててそれをコミカルに仕上げるという役回りがうまそうで、後半はよくこの不幸乱れ打ちの主人公を演じたなと思うけど、そこまでさせておいてラストに救いが見られないのは主人公を"衝撃の真実"に従属させてるというかインパクト優先になってるというか、とにかく感情的な清算がないままだから作品全体のなかで彼女の演技の価値が弱まっていると思う(特に最終的なとむくんとの関係性は結構トリッキーで面白さはあると思うからあの終わり方は少しもったいない気が。)

冒頭でマッチングアプリの市場規模を紹介し、とむくんがアプリで出会う女性に危害を加え続けていたとしても、この作品が昨今の"マッチング"や恋愛・結婚について何かをコメントすることはないし、アプリ自体が物語をよりスリリングにする機能として効果的に働いているわけでもなかった気がする。

正直この作品で感じたスリルは広告の文句にある"ラスト1秒"を根拠とする「次は何が起こるのか」「まだ何かあるのだろう」ぐらいであり、とむくんの不気味さも影山の異常性も底が見えてるし、衝撃的な出来事はどちらかというとジャンプスケア的な見せ方をしてくるけど余りにも音楽とか演出(なぜキリストなのかはわからない)が大仰すぎてむしろそっちに驚く。

母親のメイドみたいな役を斉藤由貴にさせたらそりゃあ端役では終わらないだろうと思っちゃうからここはどうにかならなかったかなぁと感じるし、事件現場も2024年にしてはやけにSE7ENっぽい気が(これは単純にSE7ENがすごいだけか?)。
あとフラッシュバック多すぎてしんどい。
要は自分とこの映画のマッチ度が低すぎたということで、左にスワイプさせていただきたい。
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