ろく

劇場版 センキョナンデスのろくのレビュー・感想・評価

劇場版 センキョナンデス(2023年製作の映画)
4.0
「香川1区」見るとおもしろさ2倍(ステマみたい)。

いや楽しかった。でも少し考えたのよ。選挙戦に関してのあーだこーだだけど作品としては多きく2つの枠に分かれているの。一つは香川での選挙戦。そしてもう一つは大阪・京都での選挙戦。

ただね、場所じゃなくてテーマも大きく二つに分かれているのよ。前者が「マスコミとは」だとしたら後者は「民主主義とは」なんだよね。そのことを考えるだけでも今作は良かったんだよ。

まず前者から。これは「香川1区」でも語られたけど香川新聞を梟首として語る「正しい報道ってなんだろう」なのよ。確かにマスコミが公平なんてのはおとぎ話なんだ。それは無理だし何らかの「偏向」はあるの。でもその「偏向」を推し進めるありきで物を書くのは納得いかないんだよ。しかも今回は明らかなるトップダウンの権力構造。令和のこの時代にこんなことが「いまだに」行われていることの怖さね。せめてしっかりと取材して書けということ、さらにはロジックにはロジックで答えるということ。その2点をどちらもしてない時点で読むに値しない新聞だよ。

映画観ていただければわかるけど、とにかくあのFAXの回答に香川新聞の「不誠実さ」が現れている。怖いのはこんなことを(一部の人たち以外)誰も言わないこと。これは同じくらい不誠実なテレビなどでは流さないんだよなぁ。

そして後半は民主主義とは。民が決めるってことが民主主義の大前提なんだけど、それは実は面倒だよってみんな思っているんじゃないの。だから「政治は分からないから」といって民主主義から逃げてしまう(おれもだ)。でもみんなが思っているその思考を見事に具現化したのが安倍政権であり大阪維新なんじゃないかという喝破には同感しきりなんですよ。だから誰が悪いかって言えば国民がなんだけど、そんなに国民が<政治の事>をわかるわけないじゃんって気持ちもわかるんだ。これすごい怖いことなんだよ。ナチスをドイツ国民はみんな認めていたじゃない。文化大革命では毛沢東をあがめ奉っていたじゃない。トランプの言うことは全て正しいっていまだに信じているじゃない。

結局疑い深く考えるより「考えないでただ信じる」ほうが樂なんだよ。

今作では主役の二人は保守でもリベラルでもなくなるべく中道でいようとしている。その姿勢やよし。でも安倍さんが殺され、さらには安倍派によりリベラルへの「論理のない攻撃」が起きると言葉を失ってしまう。彼らもまた無力だ。でも彼らは発信し続ける。それは「考えないでただ信じる」人を少しでも変えようとしているからだ(と勝手に思う)。それが蟻の一噛みでもね。

※プチ鹿島とダースベイダーを初めて見たけど水道橋博士と町山智弘じゃんと最初に感じてしまった。博士も町山さんも嫌いではないがもう少しだけ慎重になってほしい。それはこの映画の二人にも。
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