しんちゃん

オットーという男のしんちゃんのレビュー・感想・評価

オットーという男(2022年製作の映画)
4.5
〜頑固親父と人情長屋の人々が織りなすヒューマンな物語〜
「人生捨てたもんじゃない」と思わせられるアメリカ映画らしい作品でした。
最愛の妻に先立たれ会社も辞めた初老の頑固親父がおせっかいなご近所さんとの交流で徐々に再生していきます。
当初は自殺することばかり考え、近所からも孤立している(ように見えた)彼が最後には隣人の危機をあっと驚くような方法で解決したり、まるで好々爺のように小さな子供たちと遊ぶようになるまでのストーリーがテンポ良くユーモアも交えて展開していきます。
その間に若き日の彼が最愛の妻と出会い悲しい経験をする過去が、いわゆるカットバックの手法で描かれます。
エピソードの内容が秀逸!
たとえば、かつての親友だった隣人と若き日々に車の購入競争を繰り返すが最後に親友がトヨタ車を購入したことで関係が悪くなる話。典型的なアメリカ男性のカーガイ意識やアメリカファースト意識がうまく表現されています。また後半に出てくる親友の家族問題にうまく繋がるエピソードです。
LGBTのアルバイト少年が生前の亡妻の教え子だったことから仲良くなる話。亡妻の人となりや教育者としてのスタンスがわかるエピソードでした。
アパートに住む人々、特に最近引っ越してきた一家のお節介ぶりが古き日本映画に描かれる「人情長屋」を彷彿とさせます。アメリカでも日本でも失われてしまった人と人のウェットな関係が懐かしく好ましく思え、主人公と妻との深い愛情と別離の悲しみが涙を誘い深い感動を覚えました。
近年観た洋画では、あの「グリーンブック」と並ぶ名作と思いました。
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