MasterYu

シモーヌ フランスに最も愛された政治家のMasterYuのレビュー・感想・評価

3.6
フランスで後にヴェイユ法と呼ばれるようになる中絶法を勝ち取り、女性初の欧州議会議長に選出され、そこで「女性の権利委員会」の設置、更に移民問題やエイズ患者たちの人権のために活動したシモーヌ・ヴェイユの生涯を描いた作品。

残念ながら2017年に亡くなったシモーヌ・ヴェイユですが、強制収容所での悲劇的体験を暗い過去として閉じ込めず、それを力に変えて正義を成してきたことが十二分に分かる140分でした。

エルザ・ジルベルスタインには、フランスで愛されるこの偉人を演じるプレッシャーがきっとあったと思いますが、見事な存在感を持って君臨していましたね。
若い頃のシモーヌを演じたレベッカ・マルデールにも好感。

ただ自伝を書こうとして、記憶を辿るシモーヌの絡まる思考を表現しようとする意図があったのか、70年代から始まり、40年代、また70年代、次は50年代かと思ったら90年代に飛んだりして、時代が脈略なく前後し過ぎる。そのせいで登場人物は掴みにくくなるし、多少なりとも混乱してしまう構成なのは自分には合わなかったところ。

ホロコーストのシーンが長いのは、彼女の人生の中でのウエイトを考えたら仕方がないので、その苦痛は素直に受け止めたいのですが、もう少しシンプルな構成でも良かったんじゃないかなぁ。

これだけの政治家が存在したのか、ということを知る。そこにこの作品の意義があることは間違いないとは思いますが。
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