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ゴジラ-1.0のRのネタバレレビュー・内容・結末

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

映画館で友人2人と。

2023年の日本の作品。

監督は「BUMP OF CHICKEN TOUR "WILLPOLIS 2014"劇場版」の山崎貴。

あらすじ

戦後、「無」となった日本に「マイナス=負」に叩き落とすが如く、突如現れた大怪獣、ゴジラ。史上最も絶望的な状況下の中、生き残った人々はどう立ち向かうのか。

庵野秀明による2016年の衝撃作「シン・ゴジラ」から約7年、遂に、遂にやってきましたゴジラシリーズ37作目にして、最新作「−1.0(マイナスワン)」!!本当は祝日の公開初日に、観に行きたかったけど、今回は友だちと予定合わせて、今回初となる「スクリーンX(3画面のワイドスクリーンで映像を堪能できるスクリーン)」にて観てきました!!

ちなみに今回初となるスクリーンX、初めて劇場に入った時は一面だけだったのであれ?これ本当に3面になるんか?と不安だったんだけど、いざIMAXレーザーと同じようなナレーションが入ると急に3面になってワイドスクリーンへと変貌するとまさに新感覚!!まぁ、全編ワイドスクリーンてわけじゃなかったけど、大体1時間くらいはワイドスクリーンで、その没入感は慣れてくるとめちゃくちゃすごいし、明るいシーンでは普段の映画での薄暗さが全然ない明るい中での映画体験となってすげぇ不思議な体験で感動しました!!色々言われてるけど良かったよ!!

で、映画本編はというと、結論から言えば…うーん、期待してたんだけど、個人的にはイマイチというか、だめでした…。

お話はあらすじの通り、プロットはゴジラ単体にフォーカスを絞ったもので、初代「ゴジラ」や庵野秀明の「シン・ゴジラ」もそうだったけど、海外のレジェンダリー版ゴジラシリーズとは対照的にあくまで日本は「VSもの」ではなく、ゴジラ単体に絞って勝負というところが特徴的。

また、それ以上に今作の舞台は戦後まもない時代、年号で言うと1945年から47年という、昭和初期というから面白い。あの初代「ゴジラ」ですら、舞台は制作年と同じ1954年というから、多分(シリーズ全作を観ていないからわからないが)、シリーズ中1番古い時代設定となる、これはなるほど!と膝を打ちたくなる設定。

確かに、これなら戦後、敗戦まもない、まさに「無」の状況下で碌な対抗策もない中でのゴジラによる甚大な被害が際立つし、俺は観てないけど、興行的には成功した「永遠の0」や好事家たちからも評価の高かった「アルキメデスの大戦」など監督お得意の「戦争もの」の要素も自然と持ち込めるので自ずと得意ジャンルの中でゴジラを描くことができるってわけだ。

で、その上でのゴジラ!!大体のディテールは大きな脚と小さな頭、三角形のフォルムと従来のゴジラそのままの形を最新型にアップデートした感じではあるんだけど、そこに監督御用達の「白組」によるVFXによるリアリティがとにかく凄まじい!!監督作だと前作で個人的には超お気に入りの「GHOSTBOOK おばけずかん」や「ドラゴンクエスト YOUR STORY」「DESTINY 鎌倉ものがたり」などそれまでもモンスター造形はあったけど、今作はまさにその集大成と言える。特徴的なのは従来のゴジラより際立ってデカいその背鰭と尾。尻尾攻撃は薙ぎ払い!という感じで中盤での銀座襲撃シーンではビルを粉砕してその破壊力を誇示してくるんだけど、特に凄かったのは熱線ビームのシーン。今作ではギミックとして、その特徴的な背鰭がガション!ガション!と尻尾の先から順番に青く閃光しながら飛び出して、段々その閃光と飛び出る背鰭が上に上がるにつれて、そのスピードが上がっていき、首を後ろに曲げて、エネルギーを「貯めた」後の熱線ビーム発射はまるで戦艦ヤマトの波動砲のような超絶威力で、連なるビル群を一瞬で粉砕し、まるでそれ自体が原爆そのもののような甚大な被害をもたらすその規格外な威力含めてめちゃくちゃ絶望的で、尚且つかっこよくて痺れた。

あとは、今作海上シーンも多数あるんだけど、主人公、神木隆之介(「大名倒産」)演じる敷島が乗った「新生丸」を後ろから海面から背鰭と顔を出しながらグイグイ追ってくるシーンは「ジョーズ」を彷彿とさせる、今までにない恐怖感で良かった!「海洋恐怖症」的恐怖感もあるな。

また、ゴジラ以外の描写で言うと、筒状キャラクターはどれも良かったと思う。特に主演2人。神木くんは今までの好青年イメージにはない、どこか「闇を抱えた」キャラで、それは特攻隊だったのを戦闘機が故障したと偽って逃げ出した上、その整備先の大戸島でゴジラに襲われた際に何もできなかったことに起因するんだけど、まるで「エヴァ」のシンジくんのようにメソメソする感じとか真に迫ってたなぁ。特に中盤、銀座でゴジラによる熱線ビームで巻き起こった突風で浜辺美波(「シン・仮面ライダー」)演じるヒロイン、典子を失ってしまい、ゴジラに向かって怒りを露わにした、まさに慟哭と言える絶叫するシーン。子役の頃から見てるけど、こんな真に迫った悲しみを表現できる役者さんになったのかぁと嬉しい限り。

また、ヒロイン典子を演じた浜辺美波。彼女は登場時はどこかあどけなさもありつつ、孤児だった血の繋がりのない赤子を我が子のように育てているという、芯のあるキャラクターで、顔立ちの一昔前のアイドル感と相まって浜辺美波史上、個人的には1番好きになれるキャラクターだった。こんな子がいえに突然転がり込んでくるだけで世の男性諸君はそれだけで生きる希望に満ち溢れるもんだが、主人公敷島は戦争とゴジラによるトラウマで病んでいるので、絶望に打ちひしがれ、どこか自分が生きる人生ってそのものに投げやりになっていた敷島に対して「生きなきゃ!」と気丈に励まし、生きる希望を与える姿はまさにヒロインに相応しい。

このコンビは、奇しくも前クールの朝ドラ「らんまん」の夫婦コンビでもあるので、自ずと相性は抜群のように見えるので、初めは居候の間柄ながら、徐々に共同生活を通して大切な「家族」となっていく関係性を見ていると佐々木蔵之介(「シャイロックの子どもたち」)演じる秋津じゃないけど「早く覚悟決めて、身を固めろよ!」と思わずにはいられない笑。

他にも佐々木蔵之介、吉岡秀隆(「Winny」)、山田裕貴(「キングダム 運命の炎」)の「新生丸」トリオ、青木崇高(「妻の電池切れ」)など当時のウェルメイド感もありつつ、それぞれ存在感を発揮していたんだけど、個人的には安藤サクラ(「ゆとりですがなにか?インターナショナル」)演じる近所のおばさん澄子がイイ!!初めは敷島に戦争で家族を失った怒りをぶつけたり、居候生活を始めた敷島と典子を訝しむなど嫌なおばさんなのかと思っていたら、「ヤダヤダ、関わりにはなりたくないよ。」と言いつつ、その次の瞬間には赤ちゃんのためにミルクをあげたり、「これで(赤ちゃんの)粥でも作ってやんな!」となけなしの米をなんの気なしに渡したりとめっちゃイイおばちゃんやんけ😭マジで好感度抜群ですげえ良かった。

そんな感じで概ね良かったところもあるんだけど、今作とにかくドラマパートが多い。敷島と典子の関係性の築きに加え、「新生丸」での仕事パート、そして終盤からの「海神(わだつみ)作戦」に至るまでとドラマに割く時間が多く、それに加えて監督お得意の時代背景描写も重なり、肝心のゴジラパートが意外に少ない。

まぁ、それだけ登場人物にも感情移入できるとも言えるんだけど、個人的には監督過去作「Always 3丁目の夕日」に「ゴジラ」を「足した」印象が拭えない。

また、肝心のゴジラ描写も熱線ビームシーンはギミックの新鮮味もあって良かったものの、ビームによる破壊力とそれに付随する絶望感は個人的には「シン・ゴジラ」の東京壊滅シーンの方が絶望感では勝っていなかったかなぁ。

終盤の「海神作戦」もイマイチ凄いのかなんなのかわかんなかったし。

あと、ゴジラの歩き方。今作では比重を横移動に動くんだけど、まるでそれがリモコンみたいで、同じような動き方をしていた「シン・ゴジラ」は見た目の異物感も相まってそれほど違和感がないんだけど、今作のマイナスゴジラは見た目が生物感があるフォルムなので歩く際に手が固定されたままだとめちゃくちゃ違和感があった。

あと、敷島の最終的な行動も、「自分の戦争はまだ終わっていない」と特攻隊を逃げた負い目を捨て去るためにゴジラ撃退の最終手段で「海神作戦」が失敗した後、爆弾を積んだ戦闘機「震電」に乗って特攻を試みるんだけど、あれだけ覚悟を決めて搭乗したのにも関わらず青木崇高演じる整備員、橘に「ここに脱出装置があるから」と優しさを見せられるとそれに乗っかってパラシュートで脱出しちゃうのってどうなん?別に生き残る選択をしたのは、それまで生きる希望を無くしていた敷島が典子や明子(永谷咲笑)のために「生きる」道を選んだという意味でも良いと思うんだけど、それに至る心情の変化が描かれていないので、どうしても橘の助け舟に「乗っかった」感が出ちゃって、こいつチキったな!と思っちゃうよ(震電に乗る前に橘に震える自分の手を見つめて「まだ生きようとしてるみたいです」とか言っちゃってるし。)

あと、細かい点だと子役演技がどうしても気になる!演じた咲笑ちゃんはめちゃくちゃ愛らしいんだけど、なんかカメラの向こう側を見てません?セリフも何言ってるかわかんないし、泣き方も違和感あるし、監督子役演出が下手だなぁ…。あと、保育者目線で言うと終盤にアキコが描いた敷島、典子、明子の3人の似顔絵が出てくるんだけど、明子くらいの年齢でこんなに上手く丸や顔が描けるかなぁ?3人それぞれの間隔もちゃんとバランスよく空いているし、子どもが描いている「風」に見えちゃって白けてしまった。

まぁ、ゴジラパートが少ないという点に関してはどこに比重を置くかという点であり、「怪獣映画とはこうあるべき!」という決めつけで勝手に鑑賞した自分がそもそもお門違いではあるんだけど、そういうのに期待した分、個人的にはイマイチに感じてしまった。

あと、やっぱり熱線ビームのシーン然り、終盤の「作戦」のシーン然り、どうしても「シン・ゴジラ」を意識した部分が多くて、監督としては天才、庵野秀明と「ゴジラ」を通して「対決」できる!という心情も穿った見方をすると感じてしまったりした。そういう部分では広い意味で「VSもの」という見方も出来るかも笑。

まぁ、何にせよ、作品ごとに時代背景や監督の作風が顕著に現れて面白いのが「ゴジラ」シリーズ。映画も公開早々にロケットスタートを切っているみたいだし、ゴジラ大好きな1人としては界隈が賑わうのは嬉しいし、映画を観終わったあとあーだこーだ語るのもまた乙。とにかく、こういうのは鮮度が大事なので、是非多くの方に令和版ゴジラを刮目していただきたい!!
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