素晴らしく良くできていたとは思うけれど、残念ながら演出が好きじゃなかった。
これは不幸にも直近で観たのがスコセッシの『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』邦画では岩井俊二の『キリエのうた』のせいで、この後じゃ食い合わせが悪い。同じ和食でも割烹や懐石とかでなく観光地にあるようなカジュアルな家族レストランの映える創作和食。
ストーリーはいい。キャストも悪くない。映像もいい。音楽も挑戦してた。でも演出が好みじゃなかった。だから映画としての善し悪しでなく好き嫌いの話。
例えばあの子役、役員の血縁とかなんだろうかと疑ったくらい。これは直近で観た『キリエのうた』の子役が素晴らし過ぎたせい。
全体的に何故みんな思ったことを口にするんだろうと笑っちゃたし、いまだー!とかいちいち説明が親切過ぎる演出なんで、野暮な突っ込みは辞めてこれはそういう家族みんなで安心して観られるエンターテイメントなんだと素直に楽しんだほうがいい。きっと日本アカデミー賞を獲るんだろう。
演出以外は相当良かった。
脚本も人間ドラマがちゃんと両立してるし、ちゃんと終われてるのもいい。不発弾がメタファーなのもいいし『-1.0』というセンスもいい。
キャスティングも人徳ある神木くんを選んだのは英断。彼を悪く言う人はいないだろう。
撃退方法のアイディアも相当いい。ラストもちゃんとカタルシスがある。グッとくるところはダンケルクというより逆襲のシャアを思い出した。アート映画じゃないんだから大事な人が都合よく死なないのもいい。
実はこれは戦争で死ねなかった神木くん-1.0の話で、ゴジラはもちろん幾つかの突っ込みどころも全部神木くんのPTSD幻想だったとか勝手な深読みもしてた。
ひとつ分からなかったのは何故ゴジラにみんなで敬礼してたんだろう。オリジナル版のように英霊でもあるまいし。
ハリウッド版ゴジラよりはるかに日本人の口に合う新しいゴジラ。こういうの観たかったんでしょう、というような。だだそうなると改めて如何に『シン・ゴジラ』が狂っていたかが分かる。