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ゴジラ-1.0のtntnのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.5
やりたいアイデアが炸裂する場面にエネルギーを全振りしてそれ以外の強度がペナペナなバランス感と倫理的に危ういテーマをエモーションで乗り切ろうとする姿勢は、めちゃくちゃクリストファー・ノーラン。『ダンケルク』みたいなショットあったし。
クライマックスの戦闘だけ演出の気合いが段違いだし、ここは見てて面白かった。逆にそれまでは、評判の高いゴジラ襲来の場面含めて全然好きじゃなかった。偉そうなこと言うけど、俳優の演技と台詞のスケールが流石に小さすぎて見てて恥ずかしくなる。終戦直後の家の美術とか結構凝ってるのに、「撮れてない」印象が拭えず。序盤の船で逃げる場面も銀座の場面も人間達の演出がしょぼすぎて、ゴジラまで格好良く/怖く見えなくなってくる。
エンドロールで具体的な仕事内容が想像できたし苦労して作ったことはとても伝わるんだけど、だったら尚のこともうちょっと全体的に格好良く見せてくれよ。
「なんでのりこちゃんと結婚してやらんかったんだー」みたいな台詞には、どう考えてもエモくなれないだろ。
あくまでも「日本人」の受けた戦争の傷や悲劇に留まってる自閉性は、そもそも太平洋戦争というテーマの扱いに全く期待してなかったので、腹も立たないけど、まあ昨今の世界情勢踏まえればこんな毒にも薬にもならない描写で終わらせられて良かった(良くない)な、というしかない。
自己犠牲を美化しないのはまだ良いけど、結局最後の敬礼で全体主義の快楽に酔ってるじゃん。
『トップガン マーヴェリック』における、父性の復権というスーパーマッチョな自己実現を「ならず者国家」に侵入して満たすというアメリカ的無神経さに比べれば、この一応のナイーブさは全然良いと思う。『マーヴェリック』にはちゃんと怒るべきだったと反省している。
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