たか

ゴジラ-1.0のたかのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.7
ゴジラ作品を劇場で鑑賞するのは初めて。
期待を上回る迫力と構成に驚いたのが素直な感想。

1945年という時代背景もこのゴジラをもはや最高傑作とたらしめた重要な情報である。1954年公開の1stゴジラを更にブラッシュアップし、当時の感覚に現代の反省や思考にアジャストしたことで、反戦/戦いの産物を悲惨に美しく表現されたように捉える。

大戦とゴジラ戦は目的が異なる、同じに捉える主人公を含めた登場人物であるがある意味の戦争に価値を求めた夢のような生物がゴジラと解釈する。皆が戦争で失ったあらゆること・ものを受け止めきれていないなか、ゴジラを倒したことが利点と捉えてしまうことも哀しい。

戦いの神ゴジラを目覚めさせた大戦。ここに要因となる事象に反省を含むかが問題である。

1stゴジラは、オッペンハイマーの原爆開発のような科学の軍事利用への投入の問題提起。
今作では時代背景もほぼそのまま、戦争の無意味さ、悲惨さ、ジレンマが色濃く現れたものに感じた。
アメリカ軍、ソ連がほぼ関与しなかったこともただ大戦へのヘイトではなくあらゆる戦争への警鐘からであろう。

そして民営化へ。国への不信感というスパイスが風刺でもなく直接的な表現をされたことを悔やむべきだ。

久しぶりに戦時中の日本を演じている役者を観たが、やはり同じ文化の人種だから分かるようなことが多く感じた。これは外の国でも同じように汲み取れていないことが多々あるのだと実感した。

佐々木蔵之介が終始素晴らしく、人生これまででベストの「やったか?」でありそれは納得できるものだった。

ともあれ、映像は日本は島国であることを改めて実感させられる。豊富な海という武器、ゴジラのクリスタルと熱戦の壮厳さ。これがいい意味での日本映画の現在地だ。

おばあちゃんが泣いていた。
会場が静かになり、そのすすり泣く声がよく聞こえた。
私も泣いている。
たか

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