マイナスワン。
これは戦後復興を起点として生じた後ろ向きのナニカを指しているのかも知れない。
災禍を乗り越えたとして、誰もが前向きに生きられるわけではない──というのは誰しも想像出来ることだろう。
そして世界大戦という一つの負債を背負った命は人間だけではない。理外にある呉爾羅という生き物もその残り火に焼かれた被害者であった。
呉爾羅とて人が憎かった訳ではなかっただろう。自らの理の中でひっそりと生きていた一つの命。それを恐れ命を絶とうとした。誰が言い出したのかはわからぬ。後に残るは核を用いて殺そうとしたという事実のみ。
戦争を経てなお人間の本質は不変。それ故に生まれたゴジラなるもの。彼を突き動かすのは最もシンプルで無駄のない明確な反撃行動、即ち復讐の炎。それは焚べるモノ全てを等しく焼き落とす悍ましい原動力。この熱はいつかゴジラ自身を焼き尽くすのかもしれない……
触れるものすべてに疵を遺すゴジラというモノの在り方を見せた、新しくも懐かしいゴジラ。
──それがゴジラ マイナスワンという作品なのだろう。