このレビューはネタバレを含みます
怪物。久しぶりに全ての時間を忘れて、没頭して作品にのめり込んだ気がする。
冒頭から演出の計算通り早織の視点に同調し、湊を想い、学校側のクズさにイライラした。だが保利視点に切り替わり始めたくらいで「ああ、自分は狭い視点で世界を見ていたんだ」と気付かされる。現実世界でもそうだ。いつも自分の見えている世界が正しいと認識し自論を展開する。この映画を見ている時のように少し視点を上にしてみたら、違って見えるのに。
怪物はだれだろうか。自分の世界で物事を判断して動き回る早織や保利、落ち目の保利をいとも簡単に切り捨てる広奈、どれも怪物に見えなくもない。虐待をする清高、トラブルを無かったことにしたい先生たちも怪物かもしれない。いじめをする生徒、いじめの対象になりたくないから嘘をつく湊も怪物かもしれない。見方によって、世の中にはいたるところに怪物がいる。そう思った。
しかしセリフや行動の伏線回収が凄すぎた。同性を好きになった湊にとって「普通でいい」という母の言葉はどれだけ苦しかっただろう。何気ない言葉でも受け取る人の状況によっては辛い言葉となる。
とにかく素晴らしい映画だった。無駄なシーンが一つもない。素敵な時間でした。