このレビューはネタバレを含みます
失敗したなぁと思っている。
映画が楽しみすぎて待ち遠しくて、ノベライズ本読んじゃってからの鑑賞だったこと。
先が読みた過ぎて残業しないで帰った日もあるくらい面白かった。ただ、本読んだ後も何て言うかもやもやした感じで、また是枝監督作品はこんなモヤッとオープンエンドかぁ…と言う気持ちだった。
今度は映画を鑑賞することで新たな発見や解釈があるかもと、期待して見に行った。
けど、またモヤッとしてる。
あの終わり方の意味。「怪物」とは。
子ども自身(みなと、より)が自分を分からないと言う不安定な状態の生き物だと言うことなのかなぁ。
ひとくちにボーイズラブとは言えない状況なのではないか(特にみなと)と思ってるんだけど、だって、よりのことを友達として大切だと思ってるし。
でもLGBTQなのかなという自分自身への気付きが、このような不安定で自分を「怪物」だと思ってしまう状態を映画化しているものなのではないかと。
そしてそれは普通じゃないんだと思わされていく不安がまた怪物を大きくしちゃってるんだと。(よりの父の「豚の脳だから」だとか、みなとの母の「普通の暮らしでいいんだ」って普通を強調しちゃうシーンとか)
そして不安定さを抱える子どもらは(抱えてない子どもでも)、時として全うに生きようとする人(ほり先生)の人生を地獄に突き落としてしまう程の「怪物」であること。
その「怪物」の気持ちを何となく共有できる大人は、自身も心が壊れた状況にある人(校長先生)なのではないかと。
ただし、子どもらの不安定さを受け止め寄り添ってるのではなく、自分の置かれた状況や心理状態が不安定なために(校長が)発する言葉は、自分のフィルターを通して見ているだけのものであること。
その程度でも、みなとが笑顔を見せるように、ホントはみなとの気持ちとはすれ違っている大人なのに、自分側の人なんじゃないかなとホッとしてしてしまう、そんな状況にあるそれが子どもらの不安定さなのではないかということ。
そんなことを考えた。
みなととよりが怪物ゲームをし、自分は一体誰なのかを当てているところは、自分が分からないという伏線かなぁ。
そして、
あたしはみなとの母も、みなとにとっては「怪物」だと思った。一番心を委ねたい人だからこそ、分かってもらえない辛さは重い。
加えて彼女は息子を想ってはいるけど、向き合えていない。なぜ息子自身に尋ねることを避け、外堀(学校やより自身に尋ねること)でどうにか真実を知ろうとする?なぜ息子にとことん正対して尋ねようとしない?なぜ分かったふりをする?なぜ物わかりのよい母のふりをする?
それは夫に裏切られて物わかりのよい女を演じなければならなかったから。結局みなとの母もただ不安定な状況に身を置くひとりの人間。
ほり先生にとっては、みなとの母、みなとら子どもたち、校長、学校の職員、その組織、すべてが怪物の状態
誰にとってもだれかが怪物の状態になってる。でもその怪物の誰かは、他の人には怪物でない…。よりをいじめてた男の子でさえ、うちではうちの仕事を手伝う子の描写があったけど、映像だけじゃよく分かんないよなって。本だとそこも説明されてたよ。
みなとやよりにとっては、周りが自分の状況をわかってくれない怪物でしかないんだけど、それに加えて自分の中に怪物がいる状態だから、とても悩んでしまう。
最後のシーン、2人は生きてるのか?死んじゃったのか?分からない終わり方。
それは自分の中に怪物を抱えてると思いながら生きてる人にとって、普段の暮らしも自分は生きてるか死んでるかわからないくらいの状態なんだと表してるのかなと思った。
でも「自分たち仲間」とは思いを共有して素敵な世界にいるってことなのかなぁ。
あれこれ考えたけど、わかんないから人々のレビュー読もうと思う。
さて、考えるには十分な映画だったのに何故あまりスコアがのびてないのかというと、以下。
映画は、本に比べて描写が分かりにくいと思った。本読むとかなり詳しく書かれてる。この詳しさ、映像に描写があったかなって。
観客に委ねてるところが多いなと思ったから。
あと、納得いかないのはやっぱり学校というものの捉え。あーんな学校ないよ。あんな事実確認しないで頭だけ下げときゃどーにかなる、みたいな学校。
どうして本当の「日本の学校」を丁寧に描いてくれないのかなぁ…。あぁいうイメージが、世の中の人に、そして海外の人にも植え付けられるのかと思うと心からウンザリ。気持ちがこの映画に対して自分のスコアを下げてる。あの描き方だと年代も分かんない。
今、なんだよね?
ならあんな掃除の仕方ないよなとか、あんな露骨ないじめないよなとか、あんな職員室ないよなとか、あんな保護者対応ないよなとか、ホント色々思った。
あるの?
自分の知ってる現場には無い。現場知ってる人がこんな首かしげる描き方だってことは事実だから、スコアは3.9です。
演技上手な子どもたちだったなぁ…。引き込まれた。なんか、どことなく誰も知らないのときの柳楽さんみたいなさ。