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怪物のmitoのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.8
2023年66本目。
是枝裕和監督最新作。
カンヌでの脚本賞受賞も記憶に新しい本作。

登場人物のそれぞれの視点で1つの出来事を見守る事で、事件の真実が分かっていくタイプの映画。

やっぱり、是枝監督は登場人物を突っ撥ねるタイプの映画の方が良い。
是枝監督って結構、厳しい現実を描く割に希望的観測をする描写を多用して絶望感を感じさせない構成を好む傾向にあるけど、その気が強い作品は余り肌に合わない。
何か非現実的に見えちゃう。
「誰も知らない」なんてその筆頭で、リアリティを求めた映画かと思いきや、突然ファンタジーのような非現実的な展開の連続で「そうはならんやろ」と思ってしまう。

この作品は大分、登場人物に対して、救いを与えない方向に調整されていて悪くなかった。
後半、「準備しよう」〜廃電車の秘密基地の件は若干ファンタジーに寄りかけたのでハラハラした。

噂や偏見で勝手に広がっていく人々の評判。
そんなリンチのような状況を恐れ、事実を隠し、マイノリティであることをひた隠しにする。
そんな苦悩を多面的な視点で描けている。
監督が「LGBTQに特化した作品ではない」と語った通り、その概念に縛られない普遍的な苦悩を主題にしたと捉えた方が楽しめる作品だと感じた。

恐らく、生きていたら、田中裕子さん演じる校長先生は樹木希林さんに演じさせたかったのだと思うのだが、にしても演技を樹木希林さんに寄せ過ぎでは。
実際、樹木希林さんが校長演じるのも、想像するとちょっとミスマッチな気もするし。
やけにそこが気になった。
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