ペンギン侍

怪物のペンギン侍のレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.9
いろいろ意見はあるのは知っているが、この映画で日本が変わると思った。是枝と坂元裕二がクィア映画を手がけたことに大きな意味があるとは思う。

坂元裕二が「加害者をどう描くか」を考えてきたとインタビューで答えていたが、私たちはいつでも加害者になりうる可能性があるというメッセージは十分すぎるほど伝わってきた。

批判や問題があったのは、作り手の意識とプロモーションなのかと思う。試写会では「同性愛には触れるな」と関係者に箝口令が敷かれていたようだし、たしかにそれはない。マイノリティをネタバレにはしてはいけない。例えば大震災を扱う時や性被害をテーマに据える時、プロモーションでは必ず注意書きをいうと思うのだけど、それは誰かにとってはセンシティブだからこその配慮なのだけど、この「怪物」もある意味その事前配慮は必要だったと思う。結構当事者にとってフラッシュバックしちゃうシーンや思わぬところで傷つくシーンはあったと思うから。手放しで劇場に来て、傷ついてしまう人は少なからずいたと思う。でもそれは是枝や坂元裕二の本意ではないと思う。

次にこのテーマで是枝と坂元裕二が映画を作る時、わざわざ同性愛をネタバレにしなくともいい社会になっていますように。マイノリティはずっと存在してきたし、今もずっと普通に生きているので。

是枝のインタビューがアフターシックスジャンクションの6月5日分のポッドキャストで聴けるのでおすすめです。是枝がどういう心意気でこの映画に臨んだのかがわかる。
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