Yuki

怪物のYukiのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.4
怪物が鳴いた時。
僕らはその鳴き声の意味を考えた事はあるのか。

恐らく今作は今年の邦画No.1。
映画館で観れて本当に良かった。
トンネルの向こうと現実世界の対比。
モノクロと鮮やかな色彩。
そして全編を通して散りばめられた伏線と重厚感のある音楽。
こりゃ作品賞をはじめ幾多の賞を総ナメするのでは。

そもそも『怪物』とは何なのか。
強大な力を持った、得体の知れない不気味な生き物。 モンスター。 転じて、理解し難い程の不思議な力を有する人や物である。

この得体の知れない、不気味、理解し難い。
これが今作のキーワード。

人は自身では理解のできない事を怪物と定義している。
つまりそれぞれの視点によって正義も悪も。
幸も不幸も好きも嫌いも変わってくる。
自身の見ている世界だけが正しいとは限らないのである。

『怪物』は誰なのか。
息子を護る親か。
隠蔽を画策する教師か。
自身のアイデンティティに葛藤する子供達か。
好奇心と猜疑心で物事を見つめる周囲か。
怪物探しに没頭する観客か。
はたまたここに怪物はどこにもいないのか。

この回答が鑑賞者によって全く変わるよう、あえての『余白』を作っているのだ。
これが本当に計算し尽くされている。
いやはや恐れ入った。

ラストシーンは特にだが、
全編を通して議論が尽きない。
是非話し合い、その人なりの回答を聞きたい。
Yuki

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