怪物が鳴いた時。
僕らはその鳴き声の意味を考えた事はあるのか。
恐らく今作は今年の邦画No.1。
映画館で観れて本当に良かった。
トンネルの向こうと現実世界の対比。
モノクロと鮮やかな色彩。
そして全編を通して散りばめられた伏線と重厚感のある音楽。
こりゃ作品賞をはじめ幾多の賞を総ナメするのでは。
そもそも『怪物』とは何なのか。
強大な力を持った、得体の知れない不気味な生き物。 モンスター。 転じて、理解し難い程の不思議な力を有する人や物である。
この得体の知れない、不気味、理解し難い。
これが今作のキーワード。
人は自身では理解のできない事を怪物と定義している。
つまりそれぞれの視点によって正義も悪も。
幸も不幸も好きも嫌いも変わってくる。
自身の見ている世界だけが正しいとは限らないのである。
『怪物』は誰なのか。
息子を護る親か。
隠蔽を画策する教師か。
自身のアイデンティティに葛藤する子供達か。
好奇心と猜疑心で物事を見つめる周囲か。
怪物探しに没頭する観客か。
はたまたここに怪物はどこにもいないのか。
この回答が鑑賞者によって全く変わるよう、あえての『余白』を作っているのだ。
これが本当に計算し尽くされている。
いやはや恐れ入った。
ラストシーンは特にだが、
全編を通して議論が尽きない。
是非話し合い、その人なりの回答を聞きたい。