是枝作品を特に観てきたわけではないけれど、感動してではなく、やるせなくてでもなく、救われて思わず泣いてしまう、そういう作品をやはり撮る人なのだと感じた。
それから、この人の映画はただ只管に問いかける作品だと思う。ただ向き合う。向き合って、考える。でも決して答えない。答えなんて無いのだから。答えないことこそが、そして救いでもある。
子供たちだけに見える世界がいかに瑞々しいか、否が応でも子供ではなくなっていく歳の頃、それを手放したくないと何よりも望んでいたのに。次第に薄れていくことをあんなにも怖れていたのに。大人になった今、いつのまにか私は忘れていた、その輝きが何より眩しい。
田中裕子の演技が印象的だった。徹底して熱を排すキャラクターでありながら、たった一度だけ、ふと目尻に滲む体温。それまで涙の気配なんてまるでなかったのに、ほんの一言でやられた。