Marie

怪物のMarieのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.2
是枝作品を特に観てきたわけではないけれど、感動してではなく、やるせなくてでもなく、救われて思わず泣いてしまう、そういう作品をやはり撮る人なのだと感じた。
それから、この人の映画はただ只管に問いかける作品だと思う。ただ向き合う。向き合って、考える。でも決して答えない。答えなんて無いのだから。答えないことこそが、そして救いでもある。

子供たちだけに見える世界がいかに瑞々しいか、否が応でも子供ではなくなっていく歳の頃、それを手放したくないと何よりも望んでいたのに。次第に薄れていくことをあんなにも怖れていたのに。大人になった今、いつのまにか私は忘れていた、その輝きが何より眩しい。

田中裕子の演技が印象的だった。徹底して熱を排すキャラクターでありながら、たった一度だけ、ふと目尻に滲む体温。それまで涙の気配なんてまるでなかったのに、ほんの一言でやられた。
Marie

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