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怪物のkawaccioのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.6
怪物=正体の分からない不気味な生き物
穿った見方=物事の深い本質や真相を捉える見方。間違った見方というのは誤用


相手の本音や本心が分からない、つまり相手の正体が分からないというのは社会を生きていて日常的にぶつかる壁であり、コミュニケーションや人間関係の構築において悩みの種になる代表的な要因だと思う。それは親子であっても友達であっても恋人であっても同様で、他者を100%理解するというのはそれだけ難しい。

そのため、人は相手を理解するために、発言の裏を読み解こうとしたり、行動や身なりから判断しようとしたり、噂話や伝聞を頼りに推測したりとかする。そういったあらゆる情報を元に、自分都合で、辻褄合わせをするかのように「事実」をつくり、相手を理解していこうとする。
気付くとそれは誤った解釈、真相とは違う事実を築いてしまっていて、それが原因で相手との軋轢を生んだり、相手を傷つける発言や行動につながってしまったりする。

というようなテーマでストーリーが進み、そこに恋や思春期といった要素が絡んだのが本作で、まさにヒューマンドラマだと感じた。

観客をミスリードしていくような演出と、それが終盤に向けて種明かしされていく作りは心地良い。
価値観や考え方として新しい何かに気付かされるという作品ではなかったが、全てのシーンやセリフに無駄がなく、一部始終しっかり観ることに意味がある映画でとても楽しめた。
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