みゆう

怪物のみゆうのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.2
友達、後輩、Twitter、いろんな人からオススメされて「怪物」を観てきた。母からも是枝監督作品は子役の使い方が素晴らしいと後押しをされて。
その後押しを全く裏切ることなく2人の子役が素晴らしかった。
あらすじを書くと非常に長くなるので割愛するが、恐怖の中に切なさがある。
心優しく繊細すぎるあまり、心が混同してしまう湊。幼い見た目ながらもどこか達観し、諦めを感じている依里。この2人の切なく純粋なユートピアが、残酷な現実世界で美しく輝く作品だった。

ひとつの事件を中心に、さまざまな視点から物語が進む。誰が誰を怪物だと感じているのか、視点が変わるたびに分かっていく。徐々に真相が分かっていく過程が非常に面白いのだが、鑑賞後、実は自分も怪物になっていた事に気付いた。
児童を虐待する保利先生。最初は映画のタイトルの怪物とはこのことか。と誰もが思っただろう。
しかしそれは全貌の切り抜きからの視点に過ぎない。この映画だけではない。この世界も自分の視点は、ただの切り抜きでしかない。なんとなく分かっていながらも、それでもこの世の全てだと錯覚してしまう。
ただでさえ、切り抜きが流行る時代。
進化した文明はもう取り戻すことはできないけれど、常に自分を怪物だと思いながら過ごすのが合理的な生き方なのかもしれない。
みゆう

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