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怪物のmofaのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.0
【子供達の躍動感と切なさと】

是枝監督作作品とは合わないんだけど、坂本祐二監督の脚本は大好き。
という事で、
期待度は半分くらいだったけど、
いや、良かったですね。

自分の観ているものが、真実ではないと、
改めて思わされる。
 そして、「性」というものが、
まだ明確ではない時期の、
少年たちの純粋さや、危うさや、戸惑いが、
躍動感とともに存分に描かれていると思う。
 それを、きちんと演じきった子役さんが、
本当に素晴らしかったですね。
 
そして、もう、坂本龍一先生のピアノの音色が素晴らしいんです。
坂本龍一先生の、その才能を改めて感じることの出来る作品でもありました。

この作品は、
映画館で観たかったな~と後悔しました。
是枝監督らしく、映像が美しかったです。


☆以下、ネタバレです☆

物語は3部構成 母親・担任・
子供たちの目線から描かれている
その度に、自分の観ていることが全てではないこと、
自分の思い込みに、
ハッと気づかされていく。
 そういう伏線の回収が見事。
母親の視点で、
子供が車から飛び降りるシーンは、
とっても印象的で。
 どうして、そんな真似を・・・
と考えるんだけど、
「なんとなく」それも、担任のせいなんだろうな?と思っちゃう。
 でも、そうではない真実が、
子供には隠されていて。
 そういう違和感でさえ、思い込みというものは、凌駕してしまうんですよね。

 1つの出来事を、3つの視点から繊細に丁寧に描きながらも、
明確な答えを出さないというのも、この作品の秀逸なところ。
「誰が、火をつけたのか?」
「誰が轢いたのか?」
「死んでしまったのか?」
 それぞれの答えを出してしまうと、その側面が限定されてしまう。
 その答えを曖昧にする事で、この作品でも描かれていない側面があるのかも
・・・という余白を残していて。
 世の中にも、そういった出来事があふれているのだと思い知る。
 自分がすべてを把握し、
理解している事など、
ほんの、ほんの少しでしかない。
 いや、人と接する以上、
「真実」なんて無いのかもしれない。
 
特に、子供の抱える問題について、
理解する事は、
本当に難しいと感じる作品でもありました。
 自分も、子供だったはずなのに。
そんな事もすっかり忘れてしまって、
子供の考えなんて、
これっぽちも理解していないのかも知れない。

普通なようでいて、そうではない怖さ。
愛をこめて、育てていても、
そうでない怖さ。
そして、子供ゆえの怖さ。
 そういった怖さを
「怪物」だとするのなら、
私自身も抱えているに違いない。


まず、子役さん達が
素晴らしかったですよね。
もう、なんていうのかな。
自分の抱えている闇の存在に気付いていないあどけなさが、
本当に、演じきれていたな~と思うんです。
 子供2人の世界や、
その躍動感も申し分なくって、
だからこそ、無意識に、
自分たちの世界を守るために、
嘘を言ってしまったり(先生を陥れたり)
無謀なことをしてしまったり
(車から飛び降りる)

車から降りてしまうシーンは、ちょっと、
衝撃的なうまさだった。
 自分を待っていると思う友人のために、
思わず、
車から降りてしまう衝動。
2人の関係性が明確になった瞬間だった。

安藤サクワさん良かったんですけど、
正直食傷気味なんだよね。
最近は、変にまとまりすぎてるって感じで・・・・。
うまいんですけどね。
でも、なんか物足りない。
小声で演技すると、上手く見えるのかな??とか思っちゃう(笑)
 この母親も問題はあるんだけど、
その不気味さが、
台詞頼りになってしまってる感じがね。
 何度も子供に今の想いを仏壇のお父さんに言いなさい・・と
圧力かける所とか、結婚して・・・ 
とか言う所とかね。
 もっと、こう、普通の母親が抱える闇っていうのを、
演技で観たかったな・・・って思う。
 そういう意味では、
田中裕子さんは圧巻の演技だったと思う。
より不気味。
一緒に楽器を吹くシーンは、
凄く良かったです。
この校長先生の抱える闇が、
もう、とんでもなく深いのだと
思ったし。
 そういう感情が、共鳴している感じが、鳥肌物でした。

イマイチだったのは・・・・
いやさ。。。
確かに、視点違えば・・・とは思うけど、
この先生は、あまりにあまりじゃない??
 あまりに、ミスリードがすぎる(笑)
 
 ちょっと、母親目線が、
クソに描き過ぎじゃない??
 もうちょっと、この人の見え方は、
うまくして欲しかったかな~と思いました。
 クソ野郎と描くよりも、
正義感を前面に押し出した描き方の方が、面白かったような気がする。

 母親から観た先生と、
先生目線からの先生自身と、
子供たちからの先生と・・・
 同じ人物とするには、
無理があるように感じたんですよね。

最後の捉え方は・・・
哀しいけど、最後は2人とも死んじゃったんでしょうね。
哀しいわ。
こういう結末じゃない作品を
観たいもんです。
 すべてから解放された子供たちが、
野を駆け回る姿が、
切ないです。
 
そして、ピアノの音が、
子供たちへの鎮魂歌のようでした。

「怪物」のための描きおろしではないようですが、メインで使われてます。
 だけど、この作品の為に作曲されたんじゃないかと思うくらいです。
特に、サビがいいですよね~
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