とみすけ

ミステリと言う勿れのとみすけのレビュー・感想・評価

ミステリと言う勿れ(2023年製作の映画)
3.7
『ミステリという勿れ』と言われたら、この物語をなんと語ればいいのか?

原作をコミックアプリで読んで独特の雰囲気とストーリーの面白さに感化され、そのままドラマをリアタイ視聴。ドラマ最終回の消化不良で、映画化あるなと思ったのが2022年か。

ウィキだと、ミステリ(英語: mystery)とは、神秘、不思議、聖史劇(神秘劇とも)推理小説、とある。
ミステリーというと殺人があり、推理謎解きで解決する話と思ってる。
ミステリという勿れは、必ず殺人があるわけでもないし、トリックがあるわけでもない。推理と会話劇のミックスというか、本質は久能整の含蓄のある会話により露わになる人間ドラマと思っている。

映画化されたミステリという勿れは、いい意味で地味である。ほぼドラマと変わらない。映像のクオリティと俳優にお金をかけてることを除けば、ドラマの延長といえる。しかし、もうそれでいいと思う。派手な演出は、この作品とは合わない。

菅田将暉演じる久能整が広島で、狩集汐路に助けを求められる。我路と関係ありそうなその子について行くと、狩集一族の遺産相続問題に巻き込まれるという話。
汐路が危険な目に遭い、初めは遺産相続争いで殺人が起きていく話かと思ったが、早々に汐路の自作自演と判明する。理由は父親が死亡した事故での、彼女の悲しい境遇が関係していた。歪み合ってると思った狩集家の孫たちだが、一族の死亡者の共通点に気付いた整の提案で協力していく。狩集家に隠された闇とはなんなのか?

いわゆる『犬神家』系かと思ったが、そこはミステリという勿れらしい、隠された真実と人間ドラマに焦点を当てたストーリーだった。殺人事件と犯人探しなら、ミステリというしかないのだから。
突拍子もない設定や無理のある話運びはちょっと気になったが、それも含めて漫画原作らしい。正直途中であやしい人間が分かってくる。あの2人が悪いやつだな。それならその孫が実行犯かもなと。話をまとめると、結局人間が1番怖い。盲信した人間が、家系や血族の中で疑うことなく罪を冒す。ミステリという勿れでたまに出てくる、頭のネジが外れてる人に背筋が凍る。

俳優さんの演技で特筆したいのはお2人。松下洸平さんの後半の演技。素晴らしいサイコパスぶりというか、血縁教育の産物というか、もう存在と吐く言葉が凶器だった。そして狩集汐路の亡くなった父親役の滝藤賢一さん。芯の通った父親の姿と優しい笑顔にはもはや癒されてホワホワした。

『ミステリという勿れ』たしかにこの物語はミステリーでは括れない。死者と人間の話ではない。人間と人間の物語である。
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