たくみ

みなに幸あれのたくみのレビュー・感想・評価

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
3.6
【思ってもないくせに】
この監督性格悪いわぁ~
思ってもない事タイトルにするのズルいわ。
少なくとも本作を鑑賞しても、人類みな幸福を願ったような作品には見えませんでしたよ。
シニカルな目線で人間の不浄な部分が描かれてます。

舞台である村は高齢化社会国日本のメタファーかなと思います。
若い人が犠牲になって年寄りを支える。
僕ら世代は貰えるかもわからん年金を受け取る権利のために今のじいさんばあさん支えとるわけでして。
まぁそれはそれは滑稽で仕方ないんでしょう、監督的には。

何かを犠牲にしなければ誰かを幸せにすることは出来ない。
劇中、恋仲っぽい青年が出てきますが、彼は正にそのメタファーかなと思います。
自分の夢である絵を描く事を職にすることなく、家族を養うために田舎で家業を継ぐ。
自分と夢を犠牲にしたにもかかわらず、結局家族はあっけなく死ぬ。
そうなった時に誰かを幸せに出来たのかという疑問が残る。
それ故に最後彼はせめて好きな人のために犠牲になる事を選んだのではと思います。

彼の不幸が彼女の幸せを形成する。
ラストの住宅街の街並み、無機質で面白味のない家が並んでいます。
ありきたりな服を着て、お世辞にもカッコいいとは言えない無個性な男性と共に生きる事を、彼女は「幸せなんだもん」と言う。
ここでタイトルバック「みなに幸あれ」。
もう一回言います、思ってもない事タイトルにするのズルいわ。

こういう意地悪な目線で見るとまだまだ「他人の不幸の上に成り立つ幸せ」が映画には溢れてます。
いじめの孫請けみたいなんとかね。

みなさん絶対観た方が良いと思いますよ。
鑑賞して「みなに幸せ」になって欲しいです。


【その他メモ・独り言】
・監督は「地球上感情保存の法則」と言うよくわからんものから着想得たらしいです。
・「傷がある方が味が出る」
・「目に入れても痛くない」
・盆栽の剪定。
・渾身のババア出産シーン
・豚は俺らの事か、ジジババよ?
たくみ

たくみ