ABBAッキオ

波紋のABBAッキオのレビュー・感想・評価

波紋(2023年製作の映画)
3.8
 2023年荻上直子監督脚本。筒井真理子演じる主婦は夫、息子と同居し義父の介護をしていたが福島原発事故の直後、夫(光石研)が失踪。話はその夫が突然帰ってきた約10年後から本格的に始まる。その間、息子は九州で大学進学、就職、義父は施設に送られ半年前に死去、そして真理子は清らかな水を信奉する新興宗教にハマっており、庭は枯山水、家には新興宗教の水ボトルがあふれている。うらぶれた風情でのうのうと帰ってきた夫はガンで高額治療費を出してくれと頼む。おまけに久しぶりに戻った息子(磯村勇斗)は聴覚障害者の女性(津田絵理奈)を連れてきて結婚、妊娠を宣言される。
 夫失踪後もパートで家計を支え、義父の葬儀まで出した真理子は、最後は自分が我慢すればという性格なのだろう。しかし更年期の体調不良とともに溜まりに溜まった不満があふれ出すのは止めようもなく、キムラ緑、江口のりこ、平岩紙らが猫なで声をかけてくる新興宗教もそれを止められない。パート職場で知り合った老女(木野花)によって、何かにすがるのでなく自分を取り戻す術に徐々に目ざめていく。
 真理子の心象を表すかのように水滴の落ちる音、波紋の表現、手拍子などが効果として使われている。男の自分には正直よく分からないところもあるし(サウナのシーンはウケた!)、色々な解釈ができそうだが、クレイマー的買い物客(柄本明)を最後には許すかのように受け入れる。純潔の正義に救済を求めるよりも、清濁を併せて理解することが自立と解放につながるというメッセージだろうか。最後には救われた気持ちにもなれた。
ABBAッキオ

ABBAッキオ