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せかいのおきくのKUBOのレビュー・感想・評価

せかいのおきく(2023年製作の映画)
3.8
この映画は、家族で配信やレンタルで家で見るのには向いてない。なぜなら、最初から最後まで、肥桶担ぎが主人公で、ほぼほぼウンコまみれ。匂いの出る4DXとかあったら、とても見てられないだろうし、モノクロだからまだ見られるものの、全編カラーだったらさらに悲惨だろう。

こう書くと汚い映画かと思われるだろうが、ウンコを映しながら、モノクロスタンダードサイズで撮られた本作は本当に「美しい」映画だ。

時代劇と言っても主人公は侍ではない。最後まで百姓と貧乏長屋の町人だ。

池松壮亮は『仮面ライダー』の後はうんこまみれの役。

最初、長屋のぼっとん便所からウンコすくって「金払う」って何なのよ?って思った。もらうんじゃなくて払う。桶に入れたウンコを担いで農家に持っていくと、肥料として買ってくれる。

肥桶担ぎなんてドリフターズでカトちゃんがやってたギャグでしか知らなかったけど、これってとってもエコな循環型社会。本作のテーマはどうやら環境問題にあったようだ。

寛一郎と佐藤浩一も、ウンコしながらの親子共演!

そして黒木華。事件に巻き込まれ、声が出なくなってしまった「おきく」を演じているが、この人、時代劇にハマるなぁ。まだ手話がない時代に必死で伝えようとする姿、寛一郎との淡い恋。その控えめな表現がいじらしくて日本らしい。

最初は短編の企画からスタートしたという本作。各章の最後だけスッとカラーになる演出とか、台詞回しだけは今風なんだけど、空気感はしっかり時代劇だとか、あえてこの時代にモノクロスタンダードサイズで撮るとか、阪本順治監督、65歳にしてまだまだ新しいことに挑戦しようという意欲に感服する。

「侍ジャパン」とか言ってるけど、日本人の大部分は農民だった。江戸の循環型社会と市民時代劇とウンコ、そして淡い恋。

ちょっと他に見たことのない記憶に残る作品です。
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