けんけん3号

658km、陽子の旅のけんけん3号のネタバレレビュー・内容・結末

658km、陽子の旅(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

気になっていた本作をWOWOWオンデマンドで鑑賞。人生をこじらせてしまった女性が再生のきっかけを見つけるロードムービー。こんなことを言ってはいるが、普通の面白いロードムービーと思うなかれ。主人公の陽子はコミュ障で人生に躓いているから、なんとも切ないロードムービーとなっている。20年会っていなかった父親の葬儀に行くためにヒッチハイクをするはめに…。コミュ障の陽子がヒッチハイクって、かなりチャレンジャー。車に乗せてもらってるのに沈黙するし、返事もしない。見てるこっちが心配になり、ハラハラしてしまった。さらにお金を借りようとしたり、車に乗せてもらう為に身体での取引したり、陽子が完全にこじらせてるのが分かる。それでも、その後、ひとのいい老夫婦のヒッチハイクで、人間の温もりに触れて陽子が変わるきっかけを掴む。あの握手は印象的。それでも、次に着いたサービスエリアで半狂乱になり警察を呼ばれそうになる。まだまだ、こじらせは続くが、なんとか親子の車に乗せてもらう。その車中で、これまでの自分をさらけ出し、本音を声にしたことで後悔と向き合えるようになる。父親の顔も見たくなり、感謝を出来るようになった陽子は、少しづつ自分を取り戻していく。父親に合わず、人生にくじけて失われた陽子の時間と、なかなか辿り着けなかった、長い距離と辛い時間が重なるみたいだった。劇的に感動する作品ではないが、人の優しさ、温もりの価値を再確認する作品。しかし、この難しい陽子という人間を演じた菊地凛子の見事なこと。一歩踏み出せない、コミュ障の陽子が乗り移っていた。鑑賞後に柔らかい余韻が漂う作品だった。