このレビューはネタバレを含みます
「ある日不思議な光に包まれたしんのすけは超能力に目覚め、超能力を犯罪に用いる者と対峙する」というのが本作のあらすじ。
3DCGアニメーション映画ということで最初はアニメ映画にはない髪型の違和感などはあった。しかし、見ていくとそのうち慣れるので見終わった後は3DCGが合わないという感覚はなかった。
本作で最も印象に残ったのはしんのすけは敵と対峙しても暴力には訴えかけないという点だった。そしてその理由は幼稚園児だからというわけではない。かすかべ防衛隊の面々が立てこもりの人質となった際、犯人への対抗法として箒やちりとりで殴りかかることで抵抗の意を示した。
もちろんそれは当然の防衛本能だと思うので、それをおかしいという気はさらさらない。しかし、しんのすけは本作で相手を殴るというような直接的な暴力を行うことはなかったように思う。相手に理不尽な暴力を受けてもしがみつきくすぐり、ひろしの靴下を鼻に当てる(これは暴力かもしれないが...)にとどまっている。そしてそれらも自らの防衛のためではなく誰かを守るために行われているのである。
そして暴力に訴えかけない一面だけでなく、しんのすけの「仲間」思いな一面も際立っていた。相手の立場に関係なく、本心から「仲間」と唱え共に怪我をし、共に戦うしんのすけはとても輝いていた。
いじめっ子は社会に出て過去の罪を忘れのうのうと生活し、虐められたものはその傷は癒えることなく、人生に暗い影を落とすというストーリーや、日本の未来は真っ暗であるというようなセリフなど現代社会に問題提起をするような場面も見受けられたが、しんのすけの上述のような一面を見ると未来を切り拓く若者への期待を込めているような気がした。