大叔父の創った世界は破綻しかけていた。一人で積み上げてきたユートピアは時を重ねるにつれて矛盾が生じてくる。住人であるセキセイインコたちはまるで人間社会のような階層社会を作り出し、ペリカンは飢えに苦しむ。大叔父は自らのユートピアを継ぐものとして主人公である真人を選び世界を再構成するための積み木を積むように懇願するが、真人はそれを否定する。彼は自分の中の悪意を容認し、悪意にあふれる現実世界を友人と
共に生き抜くと決意する。大叔父の創り上げた虚構の世界での出来事を通じて真人は、死んだ母の喪失を受け入れ現実世界で生きてゆく道しるべを獲得する。本作のタイトルは1937年に吉野源三郎が発表した児童文学をそのまま引用したものである。37年という日本が破局に向かう時代の中で、次世代を生きる少年たちに語りかけた原作小説のタイトルを引用た。宮崎はこの2023年を破局の前の世代だととらえ、これからの困難な時代を前向きに生きてゆく為のエールとして本作を制作したのかもしれない。
