このレビューはネタバレを含みます
「難解」という評価をチラホラ見るがストーリー自体は明確で、「母を喪い後妻を受け入れられない少年が、冒険を通じて成長し、仮初の楽園を拒否し、現実を受容してそこに向かっていく」というもの。難解に見えるのはサブエピソードが足りていない、及び登場人物の心理の変遷がなおざりだからなのであって、本当は「実の母との時空を超えた共闘をアツく描く」「義母との断絶を痛ましく描く」「仮初めの世界に囚われた祖先を悲しく描く」など丁寧な作劇を積み重ねることで解消を目指すべきなのだが、『ハウル』以降の宮崎作品は概ねこの水準で、登場人物のストーリーをウェルメイドに語り切れた試しなどないので、見ている最中特に混乱はなかった。
それよりも気になったのが新しいモチーフの欠如で、「田舎に引っ越す若者」「小さくて可愛いものが大量に出てくる」「トンネルをくぐって異世界へ向かう」「おばあちゃんたち」「失われた母性への畏敬」「閉じられた仮初の楽園とそこに囚われた男」などなど、セルフパロディの集積のようなイメージが続くのは残念だった。序盤の火災のシーンはよかった。
