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君たちはどう生きるかのMasterYuのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.6
空襲で母親の久子を失った眞人は、東京から母方の実家がある地方へ疎開する。
父親の正一は経営する軍需工場をそこに移設し、母親の妹である夏子と再婚した。
眞人は夏子に対して心の壁を作り暮らしていたが、ある時屋敷の離れに建つ塔のある洋館に住む不思議なアオサギから、「母があなたを待っている」と告げられ・・・。

まさか宮﨑駿の新作を観られるとは。
まずそれだけでワクワク感が凄かった。
で、本編鑑賞後は、「なるほど、宮﨑駿も自伝的作品を作りたかったのかな?」と感じたのでした。

「君たちはどう生きるか」というタイトルではあるものの、吉野源三郎の同名小説とはまったく内容は違い、モチーフとしているのはジョン・コナリーの「失われたものたちの本」で、大まかな流れはとても似ている。
そこに宮﨑駿自身の人生というか環境を投影しているようで、彼にとっての私的な物語になっているようです。
故に彼の作家性がとても強く出ていて、説明拒否感、突き放し感が凄かったですね。
過去作の匂いを感じたり、何かしらのメタファーであったり、その辺りに反応した人も多くいたとは思いますが、しかしながら総じて観念的なストーリー、ペリカンやインコの曖昧さ、悪意のない石を積み上げる役目とかいう謎のモヤモヤさ等々から、作品として抜群に面白かったかと言えば、「う〜ん」と考え込んでしまうところ。

ただ、意味だの面白さだの云々抜きにして、スルメ的に繰り返し観たくなる宮﨑駿御大の情念は間違いなく感じましたね。

「俺はこうやって生きてきた、さて君たちはどう生きるか?」というのが、本作の本当のタイトルなのではなかろうか?
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