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君たちはどう生きるかのmiのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0
もののけ姫や天空の城ラピュタやナウシカ、ハウルとずっと反戦というテーマが根底にあるなかで作品を作ってきた宮崎駿。

これらの作品を作るまでは、戦争という辛い現実からの逃避でアニメを制作していたらしいが、どうしてもこのテーマと向き合わないまま続けていくことができず、結果としていくつもの名作を産むこととなったそう。

今作では、宮崎駿なりの過去の戦争や生きるうえでの苦しみとの付き合い方の答えを出している。
大叔父に言った終盤のまひとのセリフがまさにそれ。

大叔父は頭の良い人間で、多くの本を読み、争いや苦しみの無い完璧な世界を作り出した…と思ったが、歪み(インコ達そのもの)を生み少しずつ均衡が崩れ、結局完璧な世界など存在しないことがわかる。まひとはそのこと気づき"友達"とともに現実世界に戻った。

ファンタジーとリアリティ、矛盾したこの2つ要素をここまで高いレベルでひとつの作品に落とし込める才能はパヤオオンリー

ヒミが1年で現実に戻ってきた時「全て忘れていたけどすごく元気に帰ってきた」とお婆ちゃん達は話していた。きっと彼女も塔の中のものを持ち帰ってしまい、現実に戻ってからも一時的に記憶があったんじゃないかなと思った。
(そのことを観客に気づかせるためにまひとが石を持ち帰るシーンを挟んだのだと思う)
そして未来の息子へと本を残した。勇気を持ってここへ来られるように。

火事で亡くなってしまうことを知りながらも、こんな素敵な息子に出会えるなら現実も捨てたものじゃないと塔から戻るシーン、子を想う親の気持ちに泣けてしまう…
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