福丸

君たちはどう生きるかの福丸のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

■総評
ダメだった...
これが宮崎駿じゃなくて無名の監督だったらもっと評判悪いと思う。
分かりづらいし、ファンタジーの中のリアルが薄くて感動しないし、メッセージに関係ない話が多いし、間延びしてるし、真人の感情描写が浅いし。

■メッセージに関して
メタファーとして、
・大叔父=駿を導いた巨匠たち
・真人=駿
・塔の世界=創作の世界
で駿が塔の世界に入っていき、大叔父の意思を継いでいくという半自伝的な話でありつつも、同時に
・大叔父=駿
・真人=駿のファンな我々
・ジブリワールド=塔の世界
でもあり、駿が作り出したジブリワールド
にファンの我々が魅了され、最後には駿の「悪意のない石(意思)=これまでのジブリ作品のメッセージ、駿の純粋な創作意欲、夢、希望」を受け取って現実世界に戻る。という構造かなと。

つまり、駿が小さい時に影響された人達から受け継いだバトンを次の世代に託す話だった。

メッセージは最後の作品に相応しく、世界中にファンがいる駿がやったらパワフルなメッセージなんだけど、物語をもっとメッセージに焦点を当てた内容にすれば良いのに余計な話が多すぎた。夏子とかお母さんの幼少期とかキリコとかがメッセージに絡んで無い。

■悪かった所
・ファンタジーの中のリアルが薄い
 塔の世界は目まぐるしく世界が変わっていくんだけど、説明もなく突飛な事が起こりすぎて「もう好きにやってくれ」って感じで感動しない。例えば千と千尋のあの世界は実際に存在してそうだけど、塔の世界は夢の中って感じ。夢の中で何が起こっても驚きも無いし感動もしない。ファンタジーだからこそ地に足が着いた世界じゃ無いと。

・メッセージに関係ない話が多い
 もっとメッセージに焦点を当てた物語にしないとメッセージに深みも出ないし納得感も薄くなる

・間延び
 中盤までマジでキツかった。作画が良いからって動作を細かく描こうとしすぎ。普通だったら端折ったりカットするような動作も全部丁寧に見せる。その動作に物語的な意味はないから退屈。間延びしてる。
例えば「部屋の中に入ってベッドに寝る」という流れがあったとして、テンポ良い映画だったらベッドに横たわる瞬間から描いて終わりだけど、今作は階段上がる→ドア開ける→ベッドに行く→ベッドに横たわるまで全部見せる。必要ない。

・真人の感情描写が浅い
 わざと分かりづらく感情描写がしてると思うんだけどもっと分かりやすくしてほしい。真人は居場所が無くて、父親に構って欲しかったり、学校を休むために石で自傷したと思うんだけど、それが分かりづらい。これは映画見終わった後に考えて分かったレベルだった。
あと夏子が真人の心の痛みを理解してくれて、真人は「君たちはどう生きるか」の本を読んで夏子に心を開くと思うんだけど、それが分かりづらい。これは解説動画見て分かったレベルだった。

■良かった点
・やっぱり背景は美しい
・作画のリアリティや細かさはやっぱり凄い
・最初の火事現場に向かう作画凄かった

■補足
・青サギ=鈴木敏夫
 視聴者をジブリの世界に誘い案内する役。

・最後に青サギが「塔の世界を出たらみんな忘れてしまう」って言ってたけど、あれは「映画のメッセージは見終わったらみんな忘れてしまう」って事かなと。そして真人の手には少しだけ悪意のない石=駿の伝えたいメッセージが残ってた。少しでも伝わるなら映画作る意味あるよね
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