ヨシミバトルズザピンクロボッツ

君たちはどう生きるかのヨシミバトルズザピンクロボッツのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.4
今までのジブリ作品(吾郎監督作品以外)全部鍋に詰め込んで煮込み凝縮させた様な作品。
意外とポニョ、マーニー、アリエッティあたりなどの比較的近年の作品が近かった。

ここ数年のジブリの傾向としてはトーマスマンの様な、主人公の意識の流れと環境、そしてその成長に寄り添う、静的でヨーロッパ文学的な主題が特徴的であったが、『君たちはどう生きるか』ではそれらの要素を取り入れつつ、今流行りのマルチバースをも加えた動的でエンタメ性の高いものとなっていた。
また、従来から引き継がれる和と洋それぞれの世界を投影した美しい絵、そして久石譲のサウンドトラックはこれまでジブリ作品動揺、僕に血が騒ぐ高揚感を与えてくれた。

しかし、他の感想にもある様に所々意味不明な箇所、かなり乱雑なプロットなどもあったが、この作品はあくまで宮崎駿自身の投影なので、諸シュール映画同様そこまで意味を詮索しないでも良いかと思った。
元々その要素はあったが、彼は今作において日本を代表するアニメーション作家に飽き足らず、フェリーニやブニュエルの様なシュールで文学的かつエンタメ性のある歴史的な映画監督になってしまったのである。
ニコラスレイやオーソンウェルズの様に変に狙ってクソ滑ってしまっている遺作を作らなくて本当に良かった。

追記
エンディングテーマが全く耳に残らない複雑で今どきな感じのJPopで萎えてしまった。今からでも変更して欲しいレベル。