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君たちはどう生きるかのstaysweetのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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※いつものようにそこまでじゃないネタバレを書くけどこれについては情報なさすぎるので、パッと目に入るところは本当に内容に触れないことを書く。

先日「リバー、流れないでよ」について、演劇慣れしてるかどうかで観やすいか許容できるか好意的に受け取れるかが分かれそう、と書いた。
本作については、ジブリ!アニメ!のつもりで観ちゃうとブーブー言う人が出てきそうだなーーと思った。
マーケティングを前面に出すような人たちではないので、今回の前フリ無しについては、説明したくない/すべきでないという判断を優先したのだろう。チャンネルが違う?これまでの系譜の上に乗せたくない?断片的な情報を載せてもしょうがない?キャストばかり話題になる?スポンサー対応めんどい?一度引退宣言しちゃったしなあ?なんらか思惑はあったにしろ、一般人にはジブリブランドのヒレというかフリルもついてきちゃって、少し違う体験になったのも面白かった。これで興収がついてこなかったとしても気にするジブリじゃないしな!




で、なにに耐性があると“ジブリ“から切り替えられるかと感じたかと言えば、不条理系映画だ。サブカルというよりはアート寄りのような。これは宮崎駿が作る不思議の国のアリスであり、パンズ・ラビリンスであり、(と言いながら観てないごめんなさい)落下の王国なんだなーって思って観てた。ハウルも結構トンでるけど、もっと振り切ってる。洋画の概念強めファンタジーに近い。“作ってる人の中では筋が通ってる“の筋が一般の理屈から離れてるやつ。

夢のように展開が予想できない迷い込みファンタジーと言ってしまうとイージーだけど、そこは一貫してる。ヘタにSFを取り込んだりしてない。メタ/マルチバースと呼べたり2001年を思わせる(概念的な空間、エブエブにもあったね)シーンもあったけど、“そうとも言える”だけで“そう作ってる“わけじゃない。
時空の混線はバース概念以前からあったわけだけど、いまここでそれをやることで時勢にマッチしてる気もしてくる。とはいえベースが昭和なとこはやっぱジブリ(宮崎)なんだよなあ。
昭和で戦時中で、そっちかあー!!夏に戦争を忘れさせない!それはそれでいいけど、これはやっぱり多少は何系か内容分かってから見るもの選びたいかもなーー…と思ってたら全然ちがった。
戦時中という時代感はメインじゃないし、庭の塔が〜だとマーニーみたいだし、バディでも母を探してでも冒険でも成長譚でもない。いや、逆に全部そうとも言えるけど、断片的なとこ(+ジブリ過去作)から連想してもしょうがないんだよね。それを切り離すためにタイトルさえ中身が読みづらいのにしたん?アオサギと僕 とか 世界の秘密と裏庭の塔 くらい言ってくれてもいいと思うけど…それでもはや何系の話か言うのさえ憚られる空気に…重めなのも、大っぴらに面白かったー!と言える感想を得づらいところ。
迷い込み系という意味では千尋もそうなんだけど、あの子はポヤポヤしたところからの社会勉強→成長だった。眞人(まひと)は、自覚すら曖昧なままの焦燥、無力さ、喪失、戸惑いを抱え、内面世界に入り込んだと捉えることもできる。そこはアリスとなぞらえてしまうにはハードコアすぎて…だから冒険活劇というよりは葛藤も抱えたジュブナイルかなって。
冒頭の描写も浮くと言えば浮くけど、妻の妹と再婚するのも当然だったり、いろいろわきまえないとならない空気などの時代感が背景としてわかる。聡明ながら後悔や困惑がないわけではない歳と立場にある少年が、環境の変化に適応しなければならない狭間で葛藤と試練を乗り越えるという話だと思う。
(ジュブナイルと言えば是枝さんの怪物もね、あれも性愛を内面に持ちゆくギリギリ手前のステージにいるのが良かった)

ともかく、自分はわりとこれ好きだけど、ジブリのストーリーものではなく概念強めファンタジーとしてって感じなので話の中身は結構忘れてしまいそう。スルーしてきた感想もやっと見れるので、そこから理解が深まるかどうかにも期待。
ジブリと宮さんに重ねている感想もナルホドネとは思うけど、主人公の年代に向けたような要素としては、少年が葛藤を抱えながらも自分なりに家族を守らねばという責任感の芽生え、悪しきものは排除しなければならないという使命感が話のメインの原動力かな。そのために動く中で世界の秘密のようなものを垣間見るだけで、その探求は目的ではない。

何が言いたいかわかんないって人は、わかりやすい話を求めすぎなんだと思う。アリスなんて、不思議で説明出来ないことがいっぱいあったけど夢だったねー!で終わらせてるんだぞ?
もっとも、前情報なしではテンションの持っていき方が難しいのもわかるw 作者のイマジナリーや、その中で少年がどのように考え行動するのかに触れるものだと思って観直したらまた違うかもしれないね。


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すごいの見た。なんですかこの教養の洪水は。
これを読んでしまうと、少年=次世代にジブリを託そうとしたみたいな読みの声は吹き飛んでしまうね。
母君の言う「どうにもならないもの」をたとえコントロール出来る力を得られるとしても、自分の外にあるもので判断するのではなく、自分の矜恃を以て物事に対するべきであるということなのかな。戦争やいろんなことについての答えは出ずとも、結局は自分がどう決めるか、生きるかであり、己との対峙に立返るのである、と。そういう意味では青い鳥や星の王子さま的なところもあると言える。
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