ぺんじん

君たちはどう生きるかのぺんじんのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.3
予告CMが一切無かった宮﨑駿最新作、そしておそらく最終作…さて、どうなるか…
おっ、むせ返るほどの過去の宮﨑駿成分!あれ?思ったよりもバイオレンス成分が多い…
『君たちはどう生きるか』は『風立ちぬ』を子供視点から観た、パワフルな童話だ!ハヤオ〜!
吉野源三郎の原作はほぼ関係無くって、今作は宮﨑駿からの『君たちは〜』という問いかけになっている感じ。ただあまり説教臭くはなり過ぎず、少年が大人世界を突き進む様を見せて「じゃあ君たちは?」という子どもたち・若者たちへの優しい問いかけになってる。ちなみ宮﨑駿は1941年生まれだから、主人公よりも年下です。ハヤオ〜
理不尽な不思議な世界に迷い込んでしまう感じは『不思議の国のアリス』だし、戦時下の童話といえば『パンズ・ラビリンス』かな〜。意外にも真っ直ぐな少年・少女のための童話となっております。
ストーリー全体に感じるのはイタリア映画っぽさ。宮﨑駿作品では結構あるあるだけど、強い女性がガンガン出てくるとか、お世話してくれる人が女性ばっかの母系家族的なとことか。
そうか!これは宮﨑駿にとってのフェリーニ『8 1/2』なんだ!宮﨑駿の人生をマルっと振り返っての問いかけ!ハヤオ〜!
と思ったら屋敷ホラー的な所もあるし、異常な量の血も出てくる…という事はこれは『サスペリア』そして『ビヨンド』なのか⁈イタホラ⁈
そして作中に門が出てくるところは多分ダンテ『神曲』。宮﨑駿の人生はイタリアとかドイツとか戦中・戦後のヨーロッパ的な教養主義と共にあったんだよなと思ってしみじみします…ニーチェっぽい人も出てきたしね…
という事で童話的な世界は安定しているけど、衆愚的な世界を示していると思う。鳥のモチーフはナチスよりもムッソリーニのファシスト党かな?アオサギは大人社会の嫌な部分を一人のキャラクターに凝縮したような感じ。ファンタジーにこういう醜いキャラクターをキッチリ描き切れるのは流石宮﨑駿だなと感じる。
苦しい現実から目を背けず、安定した場所から飛び出し、みんなで生きていこうというどストレートのメッセージ。最近だと『かがみの孤城』のテーマとかなり近い。というか宮﨑駿作品であんなに抽象的で書き込まないシーンは初めて見た気がする。ペロッ!これはもしかして碇シンジと碇ゲンドウの関係性じゃないか…もしかしたら宮﨑駿は『シン・エヴァ』ガッツリ観てたんじゃないか!ハヤオ〜、そしてアンノ〜!
正直言って今作には目新しい場面は全く無かったけど、過去のジブリ作品のあれやこれやが思い出してきてなんかグッときてしまった…ちょっと『インディ・ジョーンズ』ぽさもあって楽しかった!
ちょっと古めかしさはあるけど、現代の子ども・若者に向けての渾身の火の玉ストレート!ありがとう宮﨑駿‼︎
さて、僕たちはどう生きるか…
ぺんじん

ぺんじん