海東侑

君たちはどう生きるかの海東侑のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

荷物の多さってその場所や「生きること」への執着だと思っているんだけど、眞人が東京から離れてあの家に来た時、斜めがけの鞄と小さめのリュックサックだけだった荷物が、東京へ帰る日斜めがけ鞄とドデカリュックサックになっていて少し泣きそうになってしまった。 お父さんの「行くぞ」に対する返答も「はーい(応答)」で、ここまで何度も「はい」とは言っていたけれど点呼の「はい」だったのが家族に対する返事で精神的な距離感の変化を感じた。
久石譲の音楽も凄く良くて、余裕があるなら極音とかIMAXで観るのもいいと思う。 塔が大きく映る時はわざと不協和音が鳴っていたり不安にさせるような音でなのに優雅で「久石譲」って感じの音楽だった。
お父さんの「車で乗り付ける転校生なんかいないぞ」とか「誰にやられた、絶対仇を取ってやるからな」とか勝手に(良かれと思って)取る行動が「仕事が第一の、子供のことはよく知らない父親」で、解像度が高くて苦しい。 我が家も父が良かれと思ってあの手の行動をするタイプだから見ていてしんどい。

インコが眞人を追って迫ってくるところとか、ひみを大おじさまのところまで送るところとか、凄く「人間の群衆」のように見えて異様だった。 行動とか動きとかが人間のようで気味が悪いのと同時に「群衆の暴徒化」が過ってしまう。 また、インコが親子で料理している描写があったり、石の塔から逃げる時に調理器具を持っていたり、「人間」の真似事をしているようでなおそこも「インコ」が「人間」と、チグハグに見えた。他のインコは鳥の足に翼なのにインコの王だけ人の手に人の足(靴)で統率者として大おじさまの形(人間)も真似るんだな……という感じ。
着物の柄で同一人物ってわからせるの、凄く素敵だと思う。 あとあのしろいふわふわ、あんな可愛いの今までどこに隠してたんですかハヤオミヤザキィ……。 ちょこちょこ「別作品で見たことある!」みたいなのがあって、多分こちらの方がより宮崎駿の根源に近いんだろうなって感じがした。 観れば他の人が言う「宮崎駿の原液」を理解できると思う。

たとえ死ぬと分かっていても「お前の母親になるなんて素敵なことだ」って言い切れるひみは少女の姿だったけれどもう「母」であった。 それがきっとひみの「君たちはどう生きるか」という問いに対する回答だった。
母から贈られた「君たちはどう生きるか」の最初のアンサーはきっと「なつこさんを探しに行く」という行動で、いろんな分岐で自分に問うて行動を選択していくんだろうが、「どう生きるか」の答えって、死後にならないとわからない。 
海東侑

海東侑