りん

君たちはどう生きるかのりんのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.8
なんか賛否両論らしく、酷評もされているみたいで、「今までの宮崎駿作品と全く違うって、どう違うんだろう??」という興味もあり、観てきました。
予備知識は「俳優さんがまた声優をしているらしい」ということぐらいであとは皆無での鑑賞。

「いや、普通に宮崎駿の作品って感じやし!」っていうのが最初の印象。紛いもなく宮崎駿さんの描きたいモチーフ満載ですし、今までの宮崎駿作品のいろんな要素も入っていますよね。「風立ちぬ」の雰囲気とか「ハウル」の雰囲気とか、すごく入ってる。

???なんで酷評?普通に面白かったし。
(予備知識入れないで観た方がいいですよ。)

そっかあ、最近は「メタファー(隠喩)」や「行間を読む」感じって、世間に受け付けてもらえないんですよね。確かにドラマでも何でもそうみたいだし。

「ハッキリ言葉にする」「明確に意志表示」「曖昧なのはダメ」というのが「良し」とされる…というか、そうでないといろいろと相手に伝わらないらしいですね、今は、現実社会でも。
(「うちの子はバカで…」と親が他人の前で、我が子のことを謙遜して言っても、子供は「本当に親にバカだと思われている」と思うって話を聞いたことがあって…。うーん、状況とか立場とかに思いを馳せることができず、言葉のままとってしまう人が最近いるらしい。)

なんかこれから様々な作品で文学的な?深みがどんどん無くなっていくのかもなぁと、この作品が酷評されていることと併せて、複雑な気持ちになりつつ鑑賞していました。

ネタバレになるし、野暮なので内容の解釈はやめておきますが…。

でも、やっぱり宮崎駿さんは、物の質感や、物を動かす時のちょっとした音とか、キンキン硬質、柔らかい、ぬめっ、フワッとかの表現がさすが見事!炎の迫力も凄い!あと人や物の動きも本当に繊細。気持ち悪さと同時にユーモアもほのかにあって、全てに生命が感じられる!
昔、「ゲド戦記」を観た時に、同じジブリでも観察眼とか表し方の繊細さとかが無いと、こんなにベターっとした単調な表現になるんだー!?と変な感心をしたことを思い出しました。(吾朗さんごめんなさい。)

スコア5にしなかったのは、観賞後あんまり心に残ってることが少ないなあと思ったから。モチーフ一つ一つは面白いんだけどね。
ストーリーがしっかりある方がやっぱり心の琴線に触れやすいんだなと思う。多分、5年後とか10年後とかに観たらまた自分の解釈は変わりそう。なので、そこまで耐えうる作品だと再度鑑賞して思えたら、スコア満点かな。

願わくば、宮崎駿監督には、この先、興行成績とか客の評判とか無視して、自分の思いのたけを全て吐き出して好きに作品を作っていって欲しいなあ!観ている人を置いてきぼりでもいいじゃないですか。ねえ。
(お金が絡んでくるし、なかなか現代では難しいんだろうけど。)

余談ですが…(ちょっとネタバレも含めて)
木村拓哉の声はどのキャストなのか、すぐにわかったのですが、「ハウル」の少年性の表現から、今回はこんな、宮崎駿作品によく出てくる「ファンタジーを受け入れない父性」の強い声も出来るようになったんだなあとしみじみ思いました(^^;)
りん

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