余剰

君たちはどう生きるかの余剰のレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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印象的なシーンが多かった。

・冒頭の階段を駆け上がる疾走感。
・炎の熱気、息苦しさまでが感じられて見せ方で温度や感覚までが伝わることがあるんだと改めて気付かされた。
・真人の荷物に群がるばあちゃんたちが、造形もあいまって少しグロテスクだった。
・人が水のように溶けるおぞましさ、ハウルよりもより気持ち悪く見えた。

致死量のバターとジャムを乗っけたトースト、風景の美しさ、装飾の繊細さ、煌めき、涙の表現、ジブリらしさが随所に散りばめてあった。小さい頃からジブリのこういうところが好きだったんだ。
アニメーションでありながらリアリティがあって、リアルの中にデフォルメされたキャラクターがある。アオサギの歯が歯茎まで人間の歯そのもので、アンバランスであるはずなのに、序盤の掴みどころのないキャラクターの不気味さと丁寧な描写のおかげであんまり違和感が仕事しない。アニメーションならではの感覚だなと思う。

初めて「ジブリ作品最新作」と呼ばれるものを劇場で観た。今まであんまり分からなかったけど俳優が声をあてる意味や効果が分かった。いわゆる“中の人”が全く意識されない。あたかも実在の人物かのようにキャラクターと声が馴染んでいた。一番の特徴が声である声優だと、否が応でも既存のキャラクターなどの顔がチラついてみたりするけど、俳優は顔を一番見ているから声だけ聞いてもあんまり分からない。あたしが声優も俳優もそこまで詳しくないからってのもあると思う。没入感があった。


内容や伝えたいものについて理解できたかといわれると決してそうとは言えない。ただただあらゆる表現の熱量と“ジブリらしさ”に圧倒されるばかりだった。


「なんかよく分からないけどすごい」「理解できないと言いにくい」「宮崎駿監督の作品だから何が何でも素晴らしい」みたいな感覚はハイブランドのファッションショーで散見される奇抜なファッションに芸術性を見出さなければならない感覚と少し似ているなと思った。なんだか皮肉だ。
余剰

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