このレビューはネタバレを含みます
ジブリファンでもなくジブリ作品もあまり見ていない私には、大変興味深くて面白い作品だった。ちなみにヒミの家、ヒミと一緒にパンを食べるシーンが言葉にできないほど好き。
色々解説読んでみると、学ぶ部分も多くあったけど、しっくりこないものも多かった。それぞれ解説者によって考察の仕方がまったく違って面白い。
わたしが都合よく解釈したこの映画のテーマは母の愛、生と死、滅びゆく地球(人間)。
母の死後、心の傷も癒えないまま新しい母を迎え、疎開先にも馴染めない眞人を見ていると胸が痛かった。石で自分を殴ったシーンも、単純にもう学校に行きたくなかったからだと捉えたし、勇気と度胸さえあれば私もしそう。
異世界において産むという行為がものすごく特別扱いされているのも印象的。インコもナツコのことは妊娠しているから食べなかったし、産屋へ入った眞人とヒミは重罪を犯したとされる。(でも鳥たちの子供や卵は一回も出てこなかった。)墓のような産屋のシーンでなぜナツコは眞人のことを嫌いだと叫ぶのか解釈しきれなかったけれど、あれはナツコが歩み寄ろうと努力しつづけたにも関わらず、心を閉ざし冷たい態度を取り続けた眞人への疲弊みたいなものが、つわりで弱った体と石のなんらかの力で眞人に向かって直接発言するにいたったものなのかな。眞人はここで初めてナツコのことを母と呼んで、ナツコも我にかえる。
自分が死にゆく世界へ戻るヒミが嬉々としながら眞人を産めるんだから幸せだというシーンでうるっときた。私の母も同じことを言うだろう。ヒミが火を使って戦うことも輪廻転生的なものを感じて好き。
人間は愚かだし、世界を滅ぼしていくし、生と死は常に隣り合わせであるけど、この泥臭い世界が好きだというか虚構の中に生きていてはいけないという風に感じた。
自分めも
・アニメ見ないから珍しいのか分からないけど、音のない描写がものすごく多く感じた。
・ヒミの家のシーンが大好きだけど、食べているサンドイッチからしたたる真っ赤なジャム、眞人の口のまわりにつく真っ赤なジャム、ヒミが注いでくれるお茶(?)も真っ赤で血を連想させるようなものばかり。
・後継者選びに関して血族主義的な感じがあまり好きではないのと、なぜヒミではダメなのかが謎。
・鳥のフンは現実世界のメタファーみたいなものかなと感じた。