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君たちはどう生きるかのcokepotatoのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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最初の20分ぐらいで、宮崎駿もホドロフスキーと同じぐらいの年齢でリアリティのダンスと似たような構造を持つ映画を作って自分の記憶を再構築したかったんだ、と思えて入り込めた。現在の自分という出生時から一番遠いパースペクティブを得て、後悔や不快なものも全て含めてそれをなせるのは生き続けたからこそで、それを80代になって豊かな表現でアウトプットできることに勇気をもらえた。
真人は過去の監督自身でありつつ次の世代でもあり、叔父も監督自身でありつつ未来の真人であったし、制御できなくなってしまった厄介なものとして描かれているインコたちも本来は叔父が持ち込んでしまったものというのも興味深かった。炎に包まれる実母の姿も継子を拒絶する継母の姿もどちらも切なかったが、私が30代まで生きてきて見えた様々な母親の側面がそこに映されていた。
私自身は機能不全であったり強すぎる家父長制が残る家庭で育ち、不慣れな土地(国)で過ごす中で美術が救いであった。幼少期や青年期に強い否定と抑圧のある環境で育ち、ここ数年やっと自我を形成して自分の人生を生きている実感があったり、許さずとも受け入れられる物が増えてきた。10年前に鑑賞したホドロフスキーはその受け入れと脱却の過程を描いて救ってくれたし、そこから10年経った今、宮崎駿のこの映画はそこを超えてどう生きるか?の問いかけを補強してくれた。
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