くさむすび

朝がくるとむなしくなるのくさむすびのレビュー・感想・評価

朝がくるとむなしくなる(2022年製作の映画)
4.6
図らずも『WILL』と今作を連続で鑑賞してしまったが、唐田えりかも良い役者だなと再認識。ギャル店員との会話のよそよそしい感じや、ボウリングでガター連発しまくる様子など、どこかしら上手くいっていない人間を演じるのが物凄く上手かった。

最近は今作や『夜明けのすべて』のような、毒味の少ない比較的優しい目線で描かれる映画に心地よさを感じてしまい、高評価ばかりつけるようになってしまった。唐田えりか演じる飯塚と芋生悠演じる大友が居酒屋で飲む場面、最初はちょっとした愚痴で会話が進んでいくけど次第に好きなものを酒のつまみに語り始めるのが良い。自分も悪口だけじゃなくて、ああいった話題で友達と喋りたい。
雰囲気だけではなく演出も素晴らしかった。最初の男性客が新聞を投げ捨てるシーンやコンビニの前でたむろしている反グレグループが映る瞬間など、朗らか雰囲気の中で緊張感が生まれるので画面に釘付けにさせるし、その反動で後のシーンはめちゃくちゃほっこりする。チャリの2ケツは最近の邦画では見飽きている風景だけど、今作のは好きだった。飯塚のバックボーンも序盤に詳細に語られるわけではないが、スーツ姿を最初に見せた後にカジュアル目の服装でコンビニに出勤する姿や、明らかに年下の店員に敬語を使う様子などで彼女が今どういう境遇なのかを悟らせていく。カーテンの使い方も感動させるものになっていたし、思わず最後は唐田えりかの表情含め涙してしまった。石橋夕帆監督、名前すら知らなかったけどこれから追っかけていきたい。
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