羅武

ゴジラxコング 新たなる帝国の羅武のレビュー・感想・評価

2.5
小学校低学年向け

ゴジラに求めるものの違いはあるだろうが、ある意味ハリウッドゴジラのダメなところの集大成であると自分は感じた。

■怪獣である意味がない
超巨大な怪獣が歩いてるだけで人間が感じる根源的恐怖。そびえ立つ牛久大仏を見た時のようなアレ。それが今作にはない。主人公コングが人類の味方怪獣な上に、カメラも怪獣視点ばかりなので、もはや等身大ヒーローと同じで、巨大が故の緊迫感を全く感じられない。

■キャラクターが薄い
主人公コングはなまじ人間に近しい存在、つまり怪獣から遠い存在が故に、思考も動向も予想の範疇を超えない。何を考えているのかわからない、次にどう動くのか予想できないといった緊迫感は皆無。では共感できるのかというと、劇中のコングは人間で言うと小学生並の行動原理でしか動かないので、すべてが浅く共感性にも欠ける。で、敵はジャイアン。終。ゴジラとシーモに至ってはもはやただの獣・家畜であり、知能を持っているのかすら怪しかった。

人間サイドはそれに輪をかけてステレオタイプなキャラばかりで、どいつもこいつも言動も行動も薄っぺらい。それでいてぶっ飛んでるというほどでもなく中途半端なので、こんなやつ居るかよwとアニメやB級映画のように楽しむ事もできない。

■バトルシーンの迫力不足
CGやカメラワークではなく、コングは人型。しょぼさの原因はこれに尽きる。多少の怪力はあれど格闘スタイルも人の範疇を出ないので、放射火炎を放つわけでもなければやフィンガーミサイルもない。

■リスペクト皆無
ハリウッドゴジラの過去作においては、ギドラをモンスターXと呼んだりメカゴジラの素材にギドラを使ったりと、過去の日本ゴジラ映画へのオマージュとリスペクトを感じさせそれを楽しみにしていた点もあったのだが、今作のゴジラに関しては日米関係に亀裂が走ってもおかしくないレベルのぞんざいな扱いだった。

■『こういうのでいいんだよ』の誤用。
ゴジラに重厚な人間ドラマなどいらない。単純な怪獣同士の殴り合いがいい。…それはハリウッドゴジラに対して過去作でも多々擦られてきた感想であるが、今作にそれは当て嵌まらないと感じた。私見だがこの感想はあくまで『様々な味付けを何周も味わった末に原点回帰したものが最も優れている』というもので、今作は周回していない。

シンプルなバカ映画であり、安直であり、薄っぺらく、悪い意味で幼稚である。脚本はペラッペラで含みも深みも無く、CGはそらまあすごいんだけどみんな目の肥えている現代では特に目を引くことはない。これを素直に受け入れて感情を動かされるのは子供、それも小学校低学年くらいまでだろう。

結局の所今作のダメさの一番の元凶はコングを主人公にした所だと思う。コングにするならば今までの怪獣映画とは全く違ったアプローチ(頭脳戦中心・人間の女とのロマンスなど)の作品にしなければ、ただの劣化になるのだなと思わされた。
羅武

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