アオジル

インフィニティ・プールのアオジルのネタバレレビュー・内容・結末

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

「クローンをつくってそれにかわりに処刑されてもらう」という設定が出てきた場面で、
("本当に処刑されたのは本当の自分なのかそうでないのか"といった)実存を巡る映画かと思いきや、"やばい金持ちがやりたい放題する"モノジャンルになっていったのには新鮮な驚きがあってとても楽しめた。
(実存に関する問答も「(まぁ俺って元々からっぽだったし)別にいいよ!」とばかりにあっさり流される始末)

映画の表面だけ見ると
ミア・ゴス扮する怪しいエロい女と悪い金持ち連中に導かれるまま「今までにない"経験"を積めば自分がどんどん満ち足りる、(死んで)生まれ変われる」という経験至上主義的な思想に、"底なし沼"(「Infinity pool」ってこういう意味?)のごとくズブズブと溺れてく主人公の暗黒トリップ。
のようだが、
・主人公がスランプで処女作から何年も新作を描けていない作家
・実は処女作は誰からも評価されておらず才能ある義父に頼っていると批評家から指摘されている
という設定に、どうしてもブランドンの自虐が込められているのではないかと思った。

最後に"犬"となった自分のクローンを自分で殺し、真の意味で生まれ変わった主人公がミア・ゴスのおっぱいを赤ん坊のように吸う場面を見て、
「そうか、これはスパルタ母ちゃんミア・ゴスのハードなシゴキを撮ることで、ブランドンがさらに生まれ変わろうとした映画だったのか!」と勝手に想像して納得。

授乳シーンも含めて、(何故か映画に出るたびに身体を張りまくる北欧ハンサム)アレクサンダー・スカルスガルドと変な映画を一手に引き受ける変な女優ミア・ゴスのハンバーグ×メンチカツみたいな食い合わせや、
突然静かな場面から轟音をならす分かりやすいジャンプスケア、やたら長くエロいトリップシーンなど
父デヴィッドにもなかった若さ溢れるやり過ぎ感があって、「ブランドン!面白かったよ!」と言ってあげたくなる良作。
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