バタンキュー

岸辺露伴 ルーヴルへ行くのバタンキューのレビュー・感想・評価

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
3.0
なかなの完成度の和製ホラー作品。
もともと完璧な原作。それを十分に理解した脚本と演出が、魅力を際立たせている。

あらすじ)
「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンアウト作品、の奇跡の実写ドラマ版、が高評を受けての劇場版。世界的な天才漫画家、岸部露伴(高橋一生)。「世界で最も黒い絵」にまつわる謎に誘われ、編集者・泉京香とともにフランス・ルーブル美術館へ。そこで待つ、人知を超えた謎と過去。

なにはなくとも、岸部露伴(高橋一生)だ。
ビジュアル・声・所作、すべてがカッコいいの極み。

もともと、ジョジョの登場人物は原作漫画で魅力が完成しすぎているため、映像化は極めて難しい。それを俳優陣の高いポテンシャルと巧みな演出で「われらが露伴先生」を(原作ファンを納得させる品質で)実写化することに成功している。その時点で、このシリーズはもう勝っている。

その魅力は劇場版でも変わらず。ぶっきらぼうで知的で早口でイケメンな天才漫画家は、美しき謎を秘めたルーブル美術館へ。岸部露伴by高橋一生inルーブル。

舞台はパリだが浮かれることはなく、作品の雰囲気は変わらず和製ホラーサスペンス。演出・脚本の妙もあって、観客も謎の本質を中々解きほぐすことはできない。
冒頭から、常に暗雲立ち込める冷たく暗い雰囲気だが、露伴&泉のコミカルな会話が楽しく、何気ない泉の一言から謎の糸口を掴むいつもの展開はテンポが良く、とても心地よかった。
プロットには冗長な演出も蛇足もなく、コンパクトに感じるくらいに絞られている印象。
後半で一気に謎解きでスッキリ解決…と思ったら、その先に更なる真相が…という最高な展開で、最後まで楽しく鑑賞できた。

上映時間は118分と、長くも短くもないが、実に内容が濃く、鑑賞後の満足度は高かった。

本シリーズは美術・衣装などのルックがとても秀逸で、本作でもその映えは変わらず。
特に、終盤で正体を現す「世界で最も黒い絵」の姿は、そこまでの文脈も相まってゾッとするほど恐かった。よくこんなものを創造したもんだと思う(作中の作者ではなく製作者に対して)

正直、本作はもともとシリーズとして洗練されていて文句をつけるところが特にない。

あえて書くなら、舞台をルーブルに移すも、作風を貫いたことで、よくある劇場版でのスケールアップ感はなく、TVシリーズの延長のように見えてしまっているくらいか。まあ十分なのだが。

作中の露伴先生のような、憎たらしいほどデキのよい作品だと思った。

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