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岸辺露伴 ルーヴルへ行くのヒムロのレビュー・感想・評価

岸辺露伴 ルーヴルへ行く(2023年製作の映画)
4.5
「ピンクダークの少年」の作者、世界的な超有名漫画家の岸辺露伴にはある能力があった。
それは人を本に変えて心の中を読む事、そしてその本に命令を書き込む事。
発端は10年前、祖母の家で泊まり込みで漫画を描いていた時に下宿として泊まりに来ていた奈々瀬という女性。
彼女の言った「世界一黒い絵」という言葉と彼女の影を追って、岸辺露伴はルーヴルへと行く。



ドラマ版の雰囲気はそのままに原作で分かりづらかった所をかなり噛み砕いて分かりやすくしていた印象。

実際のルーヴルを使ったロケは絵力が半端なく強くて凄まじい。
絵の前でただ会話しているだけなのに背景に集中力が持っていかれるぐらいにルーヴルは魅力的だ。
原作自体もルーヴルからの依頼で作ったエピソードなので、映画化に至っても協力的なのは当然だが嬉しい。

原作では割とカラフルでオシャレだった登場人物達の服装はテーマに合わせてモノクロトーンを中心にしつつ、現代チックな芸術性を感じるデザインの服になっている。
個人的には実写化に合ったトーンに落ち着いていて見やすかった。

惜しむべきは中盤で絵が燃えてしまう所だろうか。
「岸辺露伴は動かない」とは確かに原作でもタイトルに入っていないが、原作では絵はそのままにルーヴルを去っている。
ここにやはり荒木先生的に露伴が何かを解決するわけではないという「動かない」シリーズの要素を感じる。
であるからして絵が不可抗力とはいえ燃えて無力化されてしまうのは解釈違いと言わざるを得ない。
明確な解決なくしてオチを描きにくかったという都合なのだろうが、やはり岸辺露伴は動かなくて良いのだ。
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