みむさん

ザ・キラーのみむさんのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
5.0
期待どおりだった。さすが。
デヴィッド・フィンチャーが「セブン」以来のアンドリュー・ケヴィン・ウォーカー脚本で組んで、とても好みの映画になっていた。

オープニングからやっぱりかっこいい。
そして殺し屋の話だが隙のない完璧な殺し屋ではなく、執拗なまでにルーティンを守り完璧風で几帳面に見えながら失敗してしまう殺し屋。地味に見える序盤は逆にゆっくり丁寧に見せてくれているようでわくわくする。

スタイリッシュにかっこよく描いたノワール&ファスベンダー版「しくじり先生」じゃないか!?
このアンバランスに思える要素をガチギマリな映像美とダークさとサウンドで最後まで一貫して描いていてとても好き。

違う監督がやればたぶん不器用な殺し屋を物凄く泥臭く人間臭く描く映画になりそうな気がする(それはそれで面白いと思うけど)

復讐譚だがスカッとやり遂げるわけでもないし、モノローグはあるが台詞少なくわりと内向的な雰囲気や矛盾あり、ターゲットがいかにもな単純な悪役という感じはしないので好みは分かれそうだが私はそれも好きだった。

計画通りに、予想して、即興はしない、その主義を持ちながら失敗して始まる出鼻挫かれ殺し屋つらいよムービー。だけど終盤に向かうにつれその予想とは少し違う話になってくる。
しくじったけどそれを経てその先を掴み取る…みたいな。まさにしくじり先生じゃないかと。
偶然か必然か、失敗がステップになり得るように思える話で(個人的解釈)。

途中、全体の雰囲気からしてあるとは思わなかった肉弾戦まであって。
血なまぐさくて泥臭い話なのに、やけにキッチリキャラの主人公。ユーモアもあるが出すぎてないのも良い。カッコよさと滑稽さが絶妙に混ざってる。

最高だった。

Netflix映画はソフトが出ないのが残念だ。

余談
以前から似てると言われていたけど、マイケル・ファスベンダーとヴァレリオ・マスタンドレアのそっくり加減がだいぶ収斂してきたように見えたね……
今回特にそっくり。