柏エシディシ

ザ・キラーの柏エシディシのレビュー・感想・評価

ザ・キラー(2023年製作の映画)
3.0
裏切られた殺し屋が落とし前をつける。
毎度、題材選びからしてトンがっているフィンチャーにしては今回は定番でキタ。
フィンチャーらしくないが、そこがまたフィンチャーらしいのか。
きっとアプローチが変わっているのだろうと思っていたら、割とド直球。
もちろん、バキッとした撮影、キレ味鋭い演出、タイトな編集のリズム、主人公がThe Smithsを愛聴という設定……とフィンチャーっぽさは随所に見られて、直球ながらさすがの豪速球。
神経症気味のファスベン演じるThe Killerが、非人間的に見えて実に人間臭い。
ワイティティの新作の鬼コーチより、ずっとこっちの方がずっと人間味があるw
ファスベンのモノローグが絶妙な不気味さをたたえつつも、仕事のメソッドや考え方として至極真っ当でじわじわとsympathyを引き寄せられていく。
おっと、empathyは禁物だぞ?
ナルホドな侵入シークエンスなど、モダン仕事人ものとしてリアルなアレコレに感心しつつも、ティルダ・スウィントンみたいな人が普通の住宅街に住んでいたら、やっぱり目立つだろう?とか、ファスベンのアロハシャツとキャップのミスマッチ故の派手さっぷりとか、振り返るとなかなかツッコミどころもあるけれど、フィンチャーぐらいになるとそれも計算の内だろうな。
こういう軽めのフィンチャーも、良い。
柏エシディシ

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