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家族のchanmoreauのレビュー・感想・評価

家族(1970年製作の映画)
3.0
ロードムービーの名作と言われる本作
だが自分には正直全く響かなかった…

長崎の伊王島から北海道根釧への長旅
夫婦と幼児2人と夫の父の5人
福山から大阪、東京そして北の大地へ
見所は予算をかけた国鉄の車内ロケ
実際に半年かけて撮影したという

確かに万博はじめ1970年の情景描写として
それなりに貴重ではあるだろう
でもそれは当時のニュース映像を見れば
充分に事足りる
撮影照明がざらっと濁っていてツラく
例えば『喜びも悲しみも幾年月』と比べたら
画の力の差は一目瞭然だろう
ロケ中心の中で録音はおっというシーンが
幾つかはあるんだけれど
全体にベタっとした造りで洗練度に欠ける

そして107分の劇中で2人の命が失われ
その描かれ方が悲しみを誘う記号に過ぎず
自分にはまるでドラマが迫ってこなかった
夫婦が北の大地を目指すための挫折や葛藤
として用意されているとしか写らず
切実な悲しみとして伝わってこない
夫の行動があまりにも身勝手で苛々するし
『幸せの黄色いハンカチ』同様に
最後に取ってつけたような空撮と妊娠で
丸め込もうとするのがまた…

ドキュメントタッチを導入したのが
当時の松竹作品としては挑戦なのだろう
1970年時点でATGで意欲的な作品がある中
予算もかけて列島縦断ロケで
脇役も豪華に使って賞も取って評価され
良かったんだろうけれど…うーむ😥
倍賞千恵子の29歳の時の輝きと九州弁を
堪能するためだけの作品だった

あと一つだけなるほどと思ったのは
一家がカトリックという設定で
長崎は土地柄納得だけど北海道の入植者も
確かにクリスチャンが多い 教会も多いし
劇中で二つの弔いがキリスト教式で行われ
東京では荼毘に伏す描写があり
北海道では埋葬して大地に還す
その差異が興味深かった
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